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【令和4年度 技術士第二次試験問題 建設部門 道路科目 Ⅲ-1】について考える。【模範解答イメージあり】

〇問題文

道路は、交通ネットワークの要として、人の移動や物資の輸送に欠かすことのできない基本的な社会資本であり、また、公共空間としても重要な役割を果たしている。近年、社会・経済情勢の変化、デジタル技術やモビリティ分野の進展等により、道路に対するニーズが多様化し、こうしたニーズへの対応が課題となっている。

このような状況を踏まえて、道路に携わる技術者として、以下の問いに答えよ。

(1)道路に対するニーズについて、技術者としての立場で多面的な観点から、近年の多様化している道路へのニーズを3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、そのニーズの内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した道路へのニーズのうち、最も重要と考えるニーズを1つ選択し、そのニーズに対する複数の対応策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての対応策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

 

 

〇問題文把握

まずはしっかり問題文を読み込み、背景・現況などを把握しましょう。

背景:社会・経済情勢の変化、デジタル技術やモビリティ分野の進展等により道路に対するニーズが多様化

現況:こうしたニーズへの対応が課題

立場:技術者(細かい設定なし)

という情報が問題文から読み取れます。

「社会・経済情勢の変化」、「デジタル技術の進展」「モビリティ分野の進展」に関わるような内容が理想的となりそうです。

 

(1)の問題文では、

「ニーズを3つ抽出し」となっていますので、「課題」ではなく、「ニーズ」を求める新しいパターンですね。

3つと個数も指定されています。

単なる知識問題とも言えるので、本来の課題解決能力を発揮する問題文とは言えない気もしますが・・・

また、「それぞれの観点を明記したうえで」となっていますので、例年同様、それぞれの観点をはっきり記述する必要もあります。

 

(1)の課題を考えるとき、思いつく解決策を先に列挙しておくと展開が楽になるのが通例ですが、この問題は課題を求めていないので当てはまらないですね。

知っている(思いつく)ニーズを挙げるのみです。

この問題は令和4年3月に公表された「多様なニーズに応える道路 ガイドライン」を参考にするのが標準となりそうですが、「2040年、道路の景色が変わる」などを参考しても合格点はもらえるでしょう。

「2040年、道路の景色が変わる」を参考に論文構成を考えた方が楽ですが・・・

実際の試験本番では「2040年、道路の景色が変わる」を参考に構成を考えた受験生が多かったのではと感じています。

 

【ニーズ候補】とその内容について、資料をもとに挙げてみると(「多様なニーズに応える道路 ガイドライン」を参考にした場合)

①道路通行機能のニーズ

・安全・安心に通行できる空間、滞留できる空間

ユニバーサルデザイン化された通行空間

②賑わい空間創出へのニーズ

・一定のエリア内で民間施設、拠点等と連携した賑わいを創出する空間

・道路自体が目的地となるような地域の顔としての空間

・ゆっくりと滞留しそれぞれの時間を過ごせる空間

③楽しめる空間創出へのニーズ

・周辺散策における休憩できる施設

・横断距離を短くした横断歩道や休憩用のベンチ等を設置した誰もが歩きやすい公園のような道路空間

・歩行者と自動車が共存する道路空間

④多様なモビリティや物流へのニーズ

・自転車による通勤・通学等の通行ルート

・路線バス等の公共交通の利用のための空間

・店舗等への荷捌き駐車スペース、個別配送ルートなど物流を支える空間

・交通結節点等でのレンタルサイクルなどシェアリングビジネスの拠点としてのスペース

・自動運転車両や、電動キックボードや自動配送ロボットなど導入が見込まれる新たなモビリティの通行空間

などが挙げられると思います。

 

参考までに「2040年、道路の景色が変わる」だと

①通勤帰宅ラッシュが消滅

②公園のような道路に人が溢れる

③人・モノの移動が自動化・無人

④店舗(サービス)の移動でまちが時々刻々と変化

⑤災害時に「被災する道路」から「救援する道路」に

などが該当しそうです。

 

また、「多様なニーズに応える道路 ガイドライン」を参考に【対応策候補】を挙げてみると

①歩行者利便増進道路(ほこみち)

②路肩・停車帯の活用(パークレット)

③多様なモビリティの走行環境整備(自転車(矢羽根型路面表示、ピクトグラム)、超小型モビリティ、パーソナルモビリティ、荷捌きスペース、自動運転、バス、タクシー等の乗降スペース)

④歩車共存道路(ハンプ、狭さく、シケイン、スムーズ横断歩道)

⑤無電柱化

などが挙げられると思います。

 

上記の【ニーズ】【対応策】をうまく整理して論文構成を練ることができれば合格論文になりそうです。

また、対応策は1つのニーズだけに対応するのではなく、複数のニーズに対応できそうなものが多いかと思います。

観点の表現が非常に悩みますが、とりあえずニーズをまとめてみると

 

・(安全・安心な利用の観点) 「道路通行機能のニーズ」     

・(安全・安心な空間活用の観点) 「賑わい空間創出へのニーズ」  

・(道路訪問の観点) 「楽しめる空間創出へのニーズ」

・(移動の観点) 「多様なモビリティや物流へのニーズ」

という整理になるかと思います。(観点はイマイチですね・・・)

 

(1)の問題文は「近年の多様化している道路へのニーズを3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、そのニーズの内容を示せ」なので、

①安全・安心な空間活用の観点から、賑わい空間創出へのニーズとその内容説明 

②道路訪問の観点から、楽しめる空間創出へのニーズとその内容説明

③移動の観点から、多様なモビリティや物流へのニーズとその内容説明

 

と4つのうち3つを記述できればOKかと思います。

 

(2)の問題文は「抽出した道路へのニーズのうち、最も重要と考えるニーズを1つ選択し、そのニーズに対する複数の対応策を示せ」となっていますが、最も重要としなければならないものは特にない気がします。ただ、資料を読むと「賑わい空間」に関することが多く記載されていますので、これを選択するのが標準となりそうです。それなりに理由が述べられれば、どれを選択しても問題ないでしょう。

 

(3)の問題文は「すべての対応策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ」となっています。

資料には「今後の課題」として、情報発信に関する課題(リスク)が記載されています。

この話題を記述すればOKかと思います。

 

以上が問題文を把握し、記述するまでの頭の中の状態です。

 

 

〇記述例

実際の記述例を簡単に記載します。

合格論文ではなく論文イメージであり、たくさんある例の1つです。詳細はご自身で調べ考え、第三者に見てもらうことで上達します。あくまでも参考資料であり、これを暗記して対応しようとしても合格はできません

 

1.ニーズ

(1)賑わい空間創出へのニーズ(安全・安心な空間活用の観点)

近年の多様化している道路へのニーズの1つとして、賑わい空間創出へのニーズがある。一定のエリア内で民間施設や拠点等と連携した賑わいを創出する空間、道路自体が目的地となるような地域の顔としての空間、ゆっくりと滞留しそれぞれの時間を過ごせる空間などが求められている。

(2)楽しめる空間創出へのニーズ(道路訪問の観点)

近年の多様化している道路へのニーズの1つとして、楽しめる空間創出へのニーズがある。周辺散策における休憩できる施設、横断距離を短くした横断歩道や休憩用のベンチ等を設置した誰もが歩きやすい公園のような道路空間、歩行者と自動車が共存する道路空間などが求められている。

(3)多様なモビリティや物流へのニーズ(移動の観点)

近年の多様化している道路へのニーズの1つとして、多様なモビリティや物流へのニーズがある。自転車による通勤・通学等の通行ルート、路線バス等の公共交通の利用のための空間、店舗等への荷捌き駐車スペースや個別配送ルートなど物流を支える空間、交通結節点等でのレンタルサイクルなどシェアリングビジネスの拠点としてのスペース、自動運転車両や電動キックボードや自動配送ロボットなど導入が見込まれる新たなモビリティの通行空間などが求められている。

 

2.対応策

上記ニーズのうち最も重要と考えるニーズは「(1)賑わい空間創出へのニーズ」である。なぜなら・・・(理由を記述)。以下にその解決策を示す。

(1)歩行者利便増進道路

賑わい空間創出へのニーズに対する対応策の1つとして挙げられることは、歩行者利便増進道路を推進することである。なぜなら、・・・(理由を述べる)。

具体的には、・・・(ほこみちの内容説明)。

(2)路肩・停車帯の活用

賑わい空間創出へのニーズに対する対応策の1つとして挙げられることは、路肩・停車帯の活用を推進することである。なぜなら、・・・(理由を述べる)。

 具体的には、・・・(パークレットの内容説明)

(3)歩車共存道路

賑わい空間創出へのニーズに対する対応策の1つとして挙げられることは、歩車共存道路を推進することである。なぜなら、・・・(理由を述べる)。

 具体的には、・・・(ハンプなどの内容説明)

 

3.リスクと対応策

上記対応策を実施し、賑わい空間を創出しても、各地の取組み状況は、それぞれの主体が報道発表するなどの情報発信にとどまり、情報は集約されず、最新知見や工夫した事例などの情報収集には時間や労力、費用がかかるリスクがある。

上記リスクの対応策として挙げられることは、各地の取組み事例をとりまとめた事例集の定期的な更新やほこみちのような情報発信サイトの設置など、広く普及に向けた取組みを実施していく必要がある。また、このような情報集約・発信を行うには、各地で取組みを実施する主体の積極的な協力が不可欠であるため、情報を集約する仕組みが有効である。

 

以上

 

〇まとめ

 ざっとまとめてみましたが、これが「正解」というわけではありません。他にもっとよい正解があるかと思います。実際に合格点をもらった論文を研究することも必要です。色々な情報を集め、多くの意見に耳を傾けることによって、更なるレベルアップに努めてください。

 

※最後まで読んでいただきありがとうございます。