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【A評価論文 令和6年度 必須科目 Ⅰ-1】

【Tさま】からA評価論文をご提供していただきました。

受験生の方はぜひ参考にしてください。

 

(1)課題の抽出と観点

1)人的資源不足の補完方法

 我が国では少子高齢化が急速に進展し、総人口が減少に転じている状況である。とりわけ、建設分野においては労働時間が長い等の雇用状態から担い手不足が心配される。したがって、人口減少・少子高齢化の進展の観点から、全国的ネットワーク形成の為に各地域で事業に携わる人的資源不足の補完方法が課題である。

2)ネットワーク形成の財源確保

 我が国の財政は少子高齢化の進行による社会保障費の増大を受け切迫している。加えて、多くの社会インフラは建設後50年を超え次世代へ継承するには修繕・更新が必要である。したがって、限られた予算を前提とした良好なインフラの次世代継承の観点から、幹線道路ネットワーク形成の財源確保が課題である。

3)都市間・地域間移動のサービスレベル向上

 我が国の高規格幹線道路は計画延長の約9割が概成し、国民の生活レベル向上に寄与してきた。しかし、高速道路の約4割は暫定2車線区間であり、都市間連絡速度は諸外国に比べ大きく遅れており、地域による連絡速度のバラつきも大きい。したがって、持続可能で暮らしやすい地域社会構築の観点から都市間・地域間移動のサービスレベル向上が課題である。

(2)最も重要と考える課題と解決策

1)最も重要と考える課題とその理由

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 上記課題のうち最も重要と考える課題は「3」である。なぜなら、誰もが便利で快適に移動できる社会の実現のためには、拠点連結型国土の構築を図り、重層的な圏域の形成が必要だからである。

2)解決策

①シームレスな国土幹線ネットワークの構築

シームレスな国土幹線ネットワークの構築が解決策の一つである。なぜなら、サービスレベル達成型に着目した階層的なネットワークが不可欠だからである。具体的には、WISENETの推進、高規格道路と直轄国道のダブルネットワーク、都市部周辺の環状道路整備、空港・港湾周辺のアクセスネットワーク充実等である。

②多様なモビリティによる移動の効率化

多様なモビリティによる移動の効率化が解決策の一つである。なぜなら、目的地や人数、利用形態により移動手段は異なり、まちづくりと共創した公共交通のリ・デザインが求められる。具体的には、EV・自動運転車両(バス・タクシー)やコネクテッドカー実用化、LRT・BRT、小型モビリティの普及推進である。

③交通結節点による利便性向上

交通結節点による利便性向上が解決策の一つである。なぜなら、現在地→目的地への交通手段として多様なモビリティを使用した場合、個々の交通モードを接続する拠点が必要となるからである。具体的には、交通モードの接続・乗換拠点(モビリティ・ハブ)が階層

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的に整備される集約型公共交通ターミナル構築である。

(3)波及効果と懸念事項への対応策

1)波及効果

上記解決策を実行して生じる波及効果は「環境負荷の低減」である。なぜなら、サービスレベル向上による渋滞緩和、速達性向上→エネルギー効率向上によりCO2排出の抑制が図られるからである。

2)懸念事項と対応策

 懸念事項は「インフラ老朽化」である。なぜなら、持続可能な社会基盤の維持に不可欠だからである。対応策は、事後保全から予防保全への本格転換、インフラメンテナンス2.0、デジタル技術の活用である。

(4)業務遂行に必要となる要件・留意点

1)技術者としての倫理

 業務遂行の過程では機能確保に加え予算や工期の制約などが生じる場合があることが要件である。その場合においても、例えば技術データ改ざん等の反倫理行為は断じて行わず、公共の安全を最優先に業務を遂行することに留意しなければならない。

1)社会の持続可能性

 業務遂行に当たり、シームレスネットワーク構築が社会や環境、生態系や景観に重大な影響を与える事を十分に認識することが要件である。その場合においても生態系や景観への影響を可能な限り最小化し、その保全を図ることに留意しなければならない。

 

※コメント

 

国土形成計画の資料に沿って記述されています。

○○の観点から、○○が課題である。の記述形式です。

課題で人員や予算について触れていますが、最重要課題からは外しています。