平成31年度試験から必須科目が「択一式」から「記述式」に変わります。
そのため平成19年度~24年度の過去問で訓練することからスタートします。
(詳細は「【平成31年度 技術士第二次試験問題 建設部門 必須科目】について考える」で記載しています)
この期間の過去問の傾向をつかみ、平成31年度試験に対応する力を養いましょう。
今回は平成24年度 建設部門 必須科目 Ⅱ-1の問題を考えてみます。
問題文
東日本大震災を契機として、あらためて防災・減災対策のあり方が議論されている。建設部門に携わる技術者として、我が国の防災・減災に向けた社会基盤の整備における課題を3つ挙げ、その内容を説明せよ。また、それらの課題に対し、防災・減災に向けた今後の社会基盤の整備を具体的にどのように進めていくべきか、あなたの意見を述べよ。
問題文把握
まずはしっかり問題文を読み込み、何を何個解答しなくてはいけないのかを把握しましょう。
今回の場合は問題文に沿って解答するだけですので
①課題 3つ
②具体的解決策 3つ(課題と同じ個数)
の2つの項目に分類されます。
課題を記述するためには、その「背景や現状」を記述しないと話が飛躍してしまいます。
そのため、実際には課題の前に背景や現状を記述しなくてはなりません。
と言うのはあくまでも過去問の話であり、実際の平成31年度問題の予想形式は
(予想形式)
東日本大震災を契機として、あらためて防災・減災対策のあり方が議論されている。建設部門に携わる技術者として、以下の問いに答えよ。
(1)〇〇〇(建設部門全般に関する基礎知識確認)
(2)我が国の防災・減災に向けた社会基盤の整備における課題を多面的に述べよ。
(3)(2)の課題に対し、防災・減災に向けた今後の社会基盤の整備施策を具体的に示し、それらを進める上での留意点を述べよ。
のような形式になるかと思います。(東日本大震災という表現は変わるでしょうけど)
要約すると
防災・災害対策の基礎知識、課題、解決策、留意点を記述する流れです。
※ここでいう「課題」、「解決策」とは【問題解決能力】を確認するものであり、「問題を分析する能力」と「それを解決に導く方向性」を表します。また、「留意点」とは【課題遂行能力】を確認するものであり、課題に対する「問題・原因抽出」と「その具体的な解決策」を表します。これを理解しないと合格論文が記述できません。
上記のような問題形式と仮定した場合、論文構成としては
1.〇〇〇
〇〇(知識確認)
2.課題
(1)〇〇
〇〇〇
(2)△△
△△△
(3)□□
・・・(個数指定はないが充実した内容を記述するなら2つが限界)
3.方策
(1)〇〇
〇〇〇
留意点として・・・
(2)△△
△△△
留意点として・・・
(3)□□
・・・(2.課題の個数に合わせる)
のような構成が一般的となります。
アンダーラインの有無や1.や(1)ではなく①や(a)のような表記で仕分けしても問題ありません。
記述例
簡単に記述例を記載します。
(合格論文ではなく論文イメージなのでご注意願います)
(文字数無視で多くの情報を記述しています)
1.〇〇〇
(専門知識に関する問題が出題されると思いますが、どんな問題が出るか前例がないためわかりません。でも、災害に関する問題ならば、平成30年度に発生した災害の被害状況は知っておかなくてはならないでしょう。
※【平成31年技術士受験対策】【2018年 災害関連まとめ】 その1~5として以前にアップしています。
特に似たような災害の区別ははっきりしなくてはなりません。
同じ地震でも大阪北部地震と北海道胆振東部地震では被害の種類が違います。
そこを読み間違えると全体的な記述内容がズレてしまいます。
また、災害でも南海トラフ地震からの津波に関する話題であれば堤防の基礎知識などを確認するかもしれません。「粘り強い構造の防波堤とはどのようなものか?」のような問題もあるかもしれませんので準備を怠らないようにしてください。)
2.課題
(1)ハード整備だけに頼らない対策
近年、地球温暖化の急激な進行により、ゲリラ豪雨や都市型水害が増加している。防災機能を最大限に発揮するため、更なる社会基盤整備が必要となってきている。しかし、整備すべき社会基盤の量は多く、また財源不足もあって手が回らない状況である。
したがって、ハード整備だけに頼らない防災・減災対策を行うことが課題である。
(2)効率的な耐震性強化
(※少し道路科目に偏った記述です)
東日本大震災を契機に、道路構造物の耐震性強化が急がれている。しかし、すべての道路構造物を早急に耐震補強するには数が多く、また財源不足であり困難な状況である。
したがって、道路構造物を効率的に耐震性強化することが課題である。
(3)リダンダンシー確保
首都直下地震が懸念される中、東京などの政治経済中枢都市に災害が発生すると、社会経済などへの打撃が甚大であり長期化する可能性がある。しかし、現状は政治経済機能、物流機能が一極集中しているため冗長性がなく避けられない状況である。
したがって、リダンダンシーを確保することが課題である。
(※実際は3つ記述すると文字数オーバーになることが多い)
3.方策
(1)ハードアンドソフトの併用
ハードアンドソフトで防災・減災対策を行うことが最も有効と考えられる。
なぜなら、ハード整備で抑止するのが困難であれば、減災対策を強化するためソフト施策を活用し被害軽減を図ることが財政面でも効果的だからである。
具体的には、津波対策のハード整備に手が回らない地域は、ハザードマップを整備し、浸水区域や避難場所、避難経路などを周知する。また、定期的な避難訓練も効果的と考えられる。更に、災害弱者を地域の住民で守る防災共助の充実や高被災リスク地域の制限なども有効と考えられる。
留意点として、ハザードマップを整備しても、地域住民が確認しなければ意味がないものとなる。各市町村のホームページなどに挙げていても、高齢者などはネットが使えず見ることができない可能性がある。そういう人のために紙ベースでの配布や町内会での共助強化も必要である。(その他、住民参加でのハザードマップ作成、まちごとまるごとハザードマップの推進という方法もあります)
また、避難訓練を年1回程度実施しても仕事の都合などで参加できない人も存在する。そういう人をフォローする体制づくり(例えば避難訓練状況を録画し、不参加の人を集めて上映し避難イメージを体験してもらうなど)も必要である。
(東日本大震災話題の留意点だと、このような記述方法もあるかと思います)
ソフト対策による減災をより高めるためには、防災意識を啓発、向上させる必要がある。
東日本大震災も過去の災害として希薄化している今、意識低下による災害リスクの高まりを抑制し、過去の災害体験を風化させないためには、継続した防災学習会や訓練、被災体験の伝承が必要と考えられる。
また、災害時の自主避難に必要な情報をいち早く伝えるために、CCTVなどによるリアルタイムの情報提供や緊急速報メールなどのICT技術も有効であると考えられる。
その他、コミュニティの強化や避難方法の確立も有効であると考えられる。
【※留意点は国土交通白書には記載されていない部分です。自分なりの考えをまとめ記述することになります。ですが、あまりにも独創的で実現不可能な提案はNGです。】
(2)選択と集中
選択と集中で優先順位を決め、耐震性強化を進めることが最も有効だと考えられる。
なぜなら、優先順位を決めて防災効果の高い箇所から整備していくことが効率的だからである。
具体的には、リスクマネジメントを活用し、発生する可能性の度合いと被害規模を掛けあわせてリスクを見積り、優先度の決定を行い、順次整備していく。
留意点として、整備完了するまで災害が待ってくれるわけではない。今すぐに地震が発生し被害が拡大することが懸念される地域もある。ハード対策だけに頼らずソフト対策も併用して災害に備えるため、早急や体制づくりも進めていく必要がある。
(3)高速道路ネットワークなどによるリダンダンシー確保
高速道路ネットワークなどによるリダンダンシー確保が最も有効だと考えられる。
なぜなら、首都機能を移転することができ、政治経済機能、物流機能の一極集中を避けることができるからである。
具体的には、首都高速道路の整備を急ぐとともに、高速道路ネットワークの機能強化を進めていく。
留意点として、財源不足の中、急いで高速道路ネットワーク整備を行うことは困難である。高速道路だけでなく一般道も含めたリダンダンシー確保の検討も必要である。また、3便益しか考慮していない費用便益分析に防災便益も考慮する方式を導入することも検討する必要がある。
(本番では文字数オーバーにならないよう適当に個数、文字数を調整する必要があります)
まとめ
一番大事なことは問題文をしっかり読み込み、聞かれていることをしっかり把握することです。問題の題意からズレてしまっては、どんなに立派な知識を論じても点数につながりません。問題文を理解するのに時間を費やすことも必要です。また、指定文字数を超えると「失格」になりますので、それだけは絶対に避けてください。
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