平成31年度試験から必須科目が「択一式」から「記述式」に変わります。
そのため平成19年度~24年度の過去問で訓練することからスタートします。
(詳細は「【平成31年度 技術士第二次試験問題 建設部門 必須科目】について考える」で記載しています)
この期間の過去問の傾向をつかみ、平成31年度試験に対応する力を養いましょう。
今回は平成23年度 建設部門 必須科目 Ⅱ-1の問題を考えてみます。
問題文
我が国の社会資本は、戦後の高度経済成長とともに着実に整備され、膨大な量の社会資本ストックが形成されてきた。しかしながら、これらの社会資本は老朽・劣化が進行しつつあり、今後、社会資本の高齢化が急速に進行する事態に直面することになる。
また、我が国の経済社会は、人口減少や少子高齢化の進展に加え、厳しい財政状況にあることから、社会資本の投資額が抑えられる状況が続いており、かつてのような右肩上がりの投資を期待することは困難である。
建設部門に携わる技術者として、このような我が国の社会資本と経済社会の現状を踏まえ、今後の社会資本整備における課題を3つ挙げ、その内容を説明せよ。
また、これらの課題に対してどのように取り組むべきか、あなたの意見を述べよ。
問題文把握
まずはしっかり問題文を読み込み、何を何個解答しなくてはいけないのかを把握しましょう。
今回の場合は問題文に沿って解答するだけですので
①課題 3つ
②解決策 3つ(課題と同じ個数)
の2つの項目に分類されます。
課題を記述するためには、その「背景や現状」を記述しないと話が飛躍してしまいます。
そのため、実際には課題の前に背景や現状を記述しなくてはなりません。
と言うのはあくまでも過去問の話であり、実際の平成31年度問題の予想形式は
(予想形式)
我が国の社会資本は、戦後の高度経済成長とともに着実に整備され、膨大な量の社会資本ストックが形成されてきた。しかしながら、これらの社会資本は老朽・劣化が進行しつつあり、今後、社会資本の高齢化が急速に進行する事態に直面することになる。また、我が国の経済社会は、人口減少や少子高齢化の進展に加え、厳しい財政状況にあることから、社会資本の投資額が抑えられる状況が続いており、かつてのような右肩上がりの投資を期待することは困難である。このような現状を踏まえ、建設部門に携わる技術者として、以下の問いに答えよ。
(1)〇〇〇(建設部門全般に関する基礎知識確認)
(2)このような我が国の社会資本と経済社会の現状を踏まえ、今後の社会資本整備における課題を多面的に述べよ。
(3)(2)の課題に対し、具体的な方策を述べるとともに、それらを進める上での留意点を述べよ。
のような形式になるかと思います。
(インフラ老朽化の対策、財政難状況におけるインフラ整備に関する問題になるかと思います。これは今の昔も大きく変わりはないかもしれません。)
要約すると
インフラ老朽化対策、財政難状況(人口減少や少子高齢化)におけるインフラ整備の基礎知識、課題、解決策、留意点を記述する流れです。
※ここでいう「課題」、「解決策」とは【問題解決能力】を確認するものであり、「問題を分析する能力」と「それを解決に導く方向性」を表します。また、「留意点」とは【課題遂行能力】を確認するものであり、課題に対する「問題・原因抽出」と「その具体的な解決策」を表します。これを理解しないと合格論文が記述できません。
上記のような問題形式と仮定した場合、論文構成としては
1.〇〇〇
〇〇(知識確認)
2.課題
(1)〇〇
〇〇〇
(2)△△
△△△
(3)□□
□□□
3.方策
(1)〇〇
〇〇〇
留意点として・・・
(2)△△
△△△
留意点として・・・
(3)□□
□□□
留意点として・・・
のような構成が一般的となります。
アンダーラインの有無や1.や(1)ではなく①や(a)のような表記で仕分けしても問題ありません。
記述例
簡単に記述例を記載します。
(合格論文ではなく論文イメージなのでご注意願います)
1.〇〇〇
(専門知識に関する問題が出題されると思いますが、どんな問題が出るか前例がないためわかりません。人口減少や少子高齢化、またはインフラ老朽化の知識に関することなのでしょう。
国土交通白書は、人口減少や少子高齢化、社会経済の話題から始まりますので、この辺の最低限度の知識は押さえておいたほうがよいのでしょう。
インフラ老朽化の知識として、コンクリート劣化のメカニズム、i-ConstructionやICT、メンテナンスサイクルの概要などでしょうか。予想するのは難しいですね・・・。時間があるときに改めてじっくり考えます。
2.課題
(1)効率的な維持管理・更新
戦後の高度成長時に集中して建設してきたインフラは今後20年で建設後50年以上経過する施設の割合が加速度的に高くなり本格的なメンテナンス時期が到来する。効率的なインフラ維持管理更新が必要だが、現状は損傷が顕在化してから補修や更新を行う事後保全が中心であり、更新時期が集中する恐れがある。厳しい財政状況の中、全ての更新を同時に対応するのは困難であり、著しく損傷が進むと維持管理費が割高になる。
したがって、更新時期の集中を防止し、効率的なインフラ維持管理・更新をすることが課題である。
(2)財源確保
人口減少による税収入の減少、少子高齢化に伴う社会保障費増大などで建設投資が年々減少している。東日本大震災などの災害復旧、復興が急がれる中、財政難の問題を抱えている行政だけでの建設投資では財源不足である。
したがって、行政だけに頼らない財源の確保が課題である。
(3)限られた財源の中での新規インフラ整備
災害リスクの高まりや国際競争の激化などへの対応としての防波堤や国際コンテナ港湾などの整備が必要である。人命に関わる防災施設などは特に必要だが、すべての整備を早急に行うことは財政的に困難である。
したがって、限られた財源の中で真に必要な新規インフラ整備を進めていくことが課題である。
3.方策
(1)予防保全
インフラ更新時期を事後保全から予防保全に転換することによりライフサイクルコストの最小化をはかることができる。またインフラ既存ストックの延命化をはかることにより更新時期をコントロールすることができる。このことで、インフラ更新時期の集中を防止することができる。
留意点として、老朽化したインフラすべてを予防保全に転換することは地方自治体(市町村)では困難である。対象インフラの規模や重要度に応じて、予防保全に転換するものと従来の事後保全のままで対応するものの区別をすることが必要である。
(他の候補)
複数のインフラを最適に管理するアセットマネジメントを導入し予算の平準化をはかる。
留意点として、アセットマネジメントに対応できる担当職員を確保することは地方自治体(市町村)では困難である。国からの支援や民間コンサルによる発注者支援などを活用する必要がある。
【※留意点は国土交通白書などには記載されていない部分です。自分なりの考えをまとめ記述することになります。ですが、あまりにも独創的で実現不可能な提案はNGです。】
(2)民間資金活用
民間の資金とノウハウを活用し、行政の財政負担の軽減をはかる。また収益事業と組み合わせて実施することにより、民間に対して新たな事業機会を創出することになる。また、それによる経済の活性化も期待できる。
留意点として、民間の資金とノウハウを活用するためPPP/PFIやコンセッション方式を導入したいが、日本での実績はまだ少ない。諸外国を例に民間が安心して参加できる体制を確立することが必要である。
(3)選択と集中
限られた財源ですべてのインフラ整備は困難であるため、選択と集中により新規インフラ整備効果をあげていく。具体的にはリスクアセスメントによる優先順位を決定し、順次インフラ整備を進めていく。
留意点として、防災対策におけるインフラ整備のリスクアセスメントの要素は災害規模と災害発生確率からリスクを見積もることになるが、災害規模や発生確率の数値がおかしなものだと優先順位が変わってしまう。根拠がはっきりしている要素を使用してリスクを見積もる必要がある。(←これはあんまり参考にならない見本ですね、勉強不足で申し訳ありません)
(文字数オーバーにならないよう適当に個数、文字数を調整する必要があります)
まとめ
一番大事なことは問題文をしっかり読み込み、聞かれていることをしっかり把握することです。問題の題意からズレてしまっては、どんなに立派な知識を論じても点数につながりません。問題文を理解するのに時間を費やすことも必要です。また、指定文字数を超えると「失格」になりますので、それだけは絶対に避けてください。