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【令和元年度 技術士第二次試験問題 建設部門 道路科目 Ⅲ-1】について考える。【模範解答イメージあり】

〇問題文

 

2020年の東京オリンピックパラリンピック競技大会の円滑な運営には、大会関係者及び観客の輸送を安全、円滑に行うことが求められているため、高度な交通マネジメントが必要である。このような状況を踏まえ、交通マネジメントの実施計画を策定する道路技術者として、以下の問いに答えよ。

(1)平時の交通処理能力を大幅に上回る大会期間中の交通需要に対して、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

 

 

〇問題文把握

 

まずはしっかり問題文を読み込み、背景・現況などを把握しましょう。

といっても問題文からわかることといえば、

場所:東京(大都市、首都高)

時期:2020年東京オリンピックパラリンピック競技大会期間(7~8月)

立場:交通マネジメント実施計画技術者

程度の情報しかないですね。(深く掘り下げて読み解く必要はないようです)

 

(1)の問題文を読んで頭に浮かぶことは、

①道路交通渋滞(一般道だけでなく高速道路も渋滞する、一般交通車両以外にも大会関係車両やタクシー・レンタカー・バスなどの影響も関係する)

②公共交通機関(鉄道)の混雑

の大きく分けて上記2つくらいでしょうか。

ただ、道路科目の技術士として②公共交通機関の直接的・積極的な話題(例えば、電車本数・車両数を増やすことで乗客数を増して混雑に対応するなど)は避けたほうがよい気がします。

「道路」とは直接関係ない(少しずれている)と感じるからです(技術士倫理綱領に「有能性の重視」があり、その意味は「自分の専門外の業務には携わらない」です)。

課題の1つに挙げる程度にしておくのがよいでしょう。

 

(1)の課題を考えるとき、思いつく解決策を先に列挙しておくと展開が楽になります

【解決策候補】として、思いつくものを挙げていくと、

(参考資料:東京2020大会の交通マネジメントに関する提言)

①交通需要抑制・分散・平準化 → 交通需要マネジメント(高速道路を賢く使う、料金施策など)

②道路状況に応じて交通の需要関係を高度に運用管理 → 交通システムマネジメント

③鉄道などの安全で円滑な輸送を実現 → 公共交通輸送マネジメント

④時差出勤、フレックスタイム、テレワーク、長期休暇取得の奨励

⑤期間中の物流の量・回数を減らす、時期・時間を前後に分散する、場所・ルートを変える

⑥効果的な広報及び情報提供

⑦事故や自然災害時の対応強化(円滑な交通が可能となるツールや体制の構築など)

⑧会場周辺の駐車場対策(駐車場の事前予約制など)

などが挙げられると思います。

 

上記【解決策候補】の【課題】を考えてみましょう。

【解決策】の反対が【課題】になるイメージで考えるとわかりやすいかもしれません

①の課題 → 一般交通(通勤車両)の他に競技会場に向かう大会関係車両が加わることで道路が渋滞する

②の課題 → 一般交通(通勤車両)の他に競技会場に向かう大会関係車両が加わることで道路が渋滞する

③の課題 → 競技会場に向かう観客や大会関係者、一般利用(通勤)者で鉄道利用者が許容範囲を超え混雑する

④の課題 → 競技会場に向かう関係者と一般利用者で道路や鉄道が混雑する

⑤の課題 → 競技会場に向かう関係車両と運送業者車両で道路が渋滞する

⑥の課題 → 様々な渋滞対策を施しても一般利用者に十分伝わらない

⑦の課題 → 車両事故や自然災害などで交通容量が低下、他路線からの交通転換により交通渋滞が発生する

⑧の課題 → 競技会場周辺で駐車場を探す車両がうろついて混雑する

という流れになるかと思います。

 

上記から【課題】【解決策】を整理すると

・(道路交通の観点) 課題が「道路交通渋滞」 → 解決策は①②④⑤⑦⑧ 

・(鉄道交通の観点) 課題が「鉄道混雑」 → 解決策は③

・(交通情報の観点) 課題が「渋滞対策情報がうまく伝わらない」 → 解決策⑥

という整理になるかと思います。

 

(1)の問題文は「多面的な観点から課題を抽出し分析せよ」なので、

①(道路交通の観点から)道路交通渋滞 

②(鉄道交通の観点から)鉄道混雑

③(交通情報の観点から)渋滞対策情報がうまく伝わらない

の3つの課題を抽出し、各々を分析(背景・現況・問題発生要因・制約要因など)することで記述できるかと思います。

 

(2)の問題文は「(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ」であるが、最も重要であり複数の解決策がある課題は「道路交通渋滞」なので、これを抽出すればよいかと思います。

 

(3)の問題文は「(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ」となっており、複数の解決策に共通して新たに生じうるリスクをまずは考えなくてはいけません。

共通して生じる【リスク候補】は「費用(コスト)関連」「人材不足関連」「ノウハウ関連」くらいしか思い浮かびません。他に何があるのでしょうか・・・情報・知識不足です・・・。

 

リスクが「費用(コスト)関連」 → 対策は「国支援」「民間資金活用」「選択と集中で対象を絞る」など

リスクが「人材不足関連」 → 対策は「ナレッジマネジメント活用」「生産性向上」「アウトソーシング」など

リスクが「ノウハウ関連」 → 対策は「国支援」「アウトソーシング」「社会実験」「試行運用」など

の流れくらいしか思い浮かびません。

この部分はあらかじめ知識の引き出しを増やしておき、試験本番、臨機応変に対応すべきところだと思います。

以上が問題文を把握し、記述するまでの頭の中の状態です。

 

 

〇記述例

 

実際の記述例を簡単に記載します。

合格論文ではなく論文イメージです。詳細はご自身で調べ考え、第三者に見てもらうことで上達します。あくまでも参考資料であり、これを暗記して対応しようとしても合格は不可能です

 

1.課題

(1)道路交通渋滞

2020年の東京オリンピックパラリンピック競技大会期間中は、通常の通勤車両や輸送車両などに加え、競技会場に向かう大会関係車両も加わることで車両交通量が増大し、道路交通渋滞が発生することが予想される。また、車両事故や自然災害などに伴う交通容量の低下や他路線からの交通転換による交通量増加により、道路交通渋滞が発生することも予想される。

したがって、道路交通渋滞を抑制・緩和し、安全で円滑な道路交通を確保することが課題である。

(2)鉄道利用者混雑

2020年の東京オリンピックパラリンピック競技大会期間中において、平時でも混雑の激しい区間・時間帯は、通常の通勤・通学者などに加え、さらに競技会場に向かう観客や大会関係者も加わることで許容輸送力を大幅に超えてしまい、鉄道利用者で大混雑することが予想される。

 したがって、鉄道利用者の交雑を抑制・緩和し、安全で円滑な鉄道交通を確保することが課題である。

(3)渋滞・混雑対策情報

2020年の東京オリンピックパラリンピック競技大会期間中は、様々な渋滞・混雑対策などが行われると予想されるが、それら対策情報が多くの企業や市民にうまく伝わらないと効果が発揮しないことになってしまう。また、車両事故や自然災害などが発生した場合も同様に、対策情報がうまく伝わらないと混乱することも予想される。

したがって、渋滞・混雑対策情報をきめ細やかに隅々まで伝達し、安全で円滑な交通情報を確保することが課題である。

2.解決策

 上記課題のうち最も重要と考える課題は「(1)道路交通渋滞」である。なぜなら・・・(理由)。以下にその解決策を示す。

(1)交通量抑制・分散・平準化

 道路交通渋滞を抑制・緩和するための解決策の1つとして挙げられることは、交通量を抑制・分散・平準化することである。なぜなら・・・(理由)。具体的には、交通需要マネジメント(TDM)により、・・・(具体的説明)。

(2)高度な運用管理

 道路交通渋滞を抑制・緩和するための解決策の1つとして挙げられることは、道路状況に応じて交通の需要関係を高度に運用管理することである。なぜなら・・・(理由)。具体的には、交通システムマネジメント(TSM)により、・・・(具体的説明)。

(3)通勤時間・場所の変更

 道路交通渋滞を抑制・緩和するための解決策の1つとして挙げられることは、通勤時間・通勤場所の変更によりピーク時間帯の過度な交通集中を抑制・緩和させることである。なぜなら・・・(理由)。具体的には、時差出勤、フレックスタイム、テレワークや長期休暇取得の奨励により、・・・(具体的説明)。

(4)物流円滑化

 道路交通渋滞を抑制・緩和するための解決策の1つとして挙げられることは、物流円滑化をはかることである。なぜなら・・・(理由)。具体的には、期間中の物流の量・回数を減らす、時期・時間を前後に分散する、場所・ルートを変えることにより、・・・(具体的説明)。

(5)事故や自然災害時の対応強化

 道路交通渋滞を抑制・緩和するための解決策の1つとして挙げられることは、事故や自然災害時の対応強化をはかることである。なぜなら・・・(理由)。具体的には、事故や自然災害時に円滑な交通が可能となるツールの開発や体制の構築などにより、・・・(具体的説明)。

(6)駐車場対策

 道路交通渋滞を抑制・緩和するための解決策の1つとして挙げられることは、会場周辺の駐車場対策をすることである。なぜなら・・・(理由)。具体的には、会場周辺の駐車場は事前予約制などにすることにより、・・・(具体的説明)。

 

※実際にはこんなに多く記述するだけ文字数に余裕はありません。

 

3.リスクと対応

上記で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとして挙げられることは、ノウハウ・実績不足である。なぜなら、現在の交通状況下における東京でのオリンピック・パラリンピック競技大会の開催は初めてのことであり、交通マネジメントの経験が全くないからである。

上記リスクの対策として挙げられることは、試行運用である。大会1年前から課題を踏まえた対策のテストを実施、その効果の検証・改善を繰り返し行うことで、大会本番には最大の効果が発揮できるよう進めていく。

 

※もっとわかりやすいリスクがあるかとは思いますが、今は思い浮かびません・・・。

 

以上

 

〇まとめ

 

 ざっとまとめてみましたが、これが「正解」というわけではありません。他にもっとよい正解があるかと思います。色々な情報を集め、多くの意見に耳を傾けることによって、更なるレベルアップに努めてください。

 

※最後まで読んでいただきありがとうございます。