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【令和2年度 技術士第二次試験問題 建設部門 道路科目 Ⅲ-1】について考える。【模範解答イメージあり】

〇問題文

我が国においては、これまで自転車に関する諸課題への対応の一環として、自転車道の整備等に関する法律(昭和45年法律第16号)等に基づく自転車道の整備や交通事故防止対策等を推進し、一定の成果を上げてきた。このような中、近年重要視されるようになってきた課題に対応するため、交通の安全を図りつつ、自転車の利用を増進し、交通における自動車への依存度を低減することによって、公共の利益の増進に資すること等が求められている。このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。

(1)自転車の活用の増進により解決されうる課題について、技術者としての立場で多面的な観点から抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

 

 

〇問題文把握

まずはしっかり問題文を読み込み、背景・現況などを把握しましょう。

過去:自転車道整備・交通事故防止対策を推進

現在:自転車利用増進・自動車依存度低減による公共利益増進を重要視

立場:技術者(細かい設定なし)

という情報が問題文から読み取れます。

単純に「自転車利用を増やすためにはどうしたらよいか」の話題であり、深く考える必要はなさそうです。

 

(1)の問題文では、

「自転車の活用の増進により解決されうる課題」と今までになかった表現になっています。

と言っても、言葉そのままを受け取ればOKでしょう。

自転車利用が増えれば解決できる課題、逆に考えれば、解決策は自転車利用が増える内容であることという考え方で問題ないでしょう。

 

(1)の課題を考えるとき、思いつく解決策を先に列挙しておくと展開が楽になります

【解決策候補】として、思いつくものを挙げていくと、

(参考資料:自転車活用推進法、自転車活用推進官民連携協議会)

①自転車専用道路等の整備(無電柱化、生活道路通過交通抑制)

②路外駐車場の整備等(違法駐車の取り締まり強化)

③シェアサイクル施設の整備

④高い安全性を備えた自転車の供給体制整備(良質な自転車の供給)

⑤自転車安全に寄与する人材の育成等

⑥情報通信技術等の活用による管理の適正化(IoT化)

⑦交通安全に係る教育及び啓発(指導・取り締まり強化、学校における交通安全教室推進)

⑧国民の健康の保持増進に関する広報活動強化

⑨青少年の体力の向上に関する広報活動強化

⑩公共交通機関との連携の促進

⑪災害時の有効活用体制の整備(避難訓練メニューに取り込む)

⑫自転車通勤の拡大

⑬サイクルツーリズムの推進(自転車競技施設の整備、自転車を活用した国際交流の促進、観光来訪の促進、地域活性化の支援)

などが挙げられると思います。

 

上記【解決策候補】の【課題】を考えてみましょう。

【解決策】の反対が【課題】になるイメージで考えるとわかりやすいかもしれません

①の課題 → 自転車と車や歩行者との接触事故(自転車乗車中の死亡事故)を減少させ安全確保に努めることで自動車から自転車利用に転換させ、CO2排出量及び交通渋滞を緩和させたい

②の課題 → 自動車の違法駐車・荷捌き車両の停車を防止し自転車の安全通行を確保することで自転車活用を推進させ、CO2排出量及び交通渋滞を緩和させたい

③の課題 → 自転車を所有していなくても気軽に自転車を利用できる環境を整備することで健康増進を推進させたい

④の課題 → 安全性が確保されていない自転車を排除し安全性を高めることで自転車活用を推進させ、CO2排出量及び交通渋滞を緩和させたい

⑤の課題 → 自転車の安全利用(交通ルール)や定期点検に関する知識不足を解消することで自転車活用を推進させ、CO2排出量及び交通渋滞を緩和させたい

⑥の課題 → シェアサイクルの仕組みを効率化し気軽に自転車を利用できる環境を整備することで健康増進を推進させたい

⑦の課題 → 死亡事故の約8割を占める自転車の法令違反を減らし安全性を確保することで気軽に自転車を利用してもらい健康増進を推進させたい

⑧の課題 → 生活習慣病の予防など自転車を利用した健康づくりに関しての興味をもたせることで気軽に自転車を利用してもらい健康増進を推進させたい

⑨の課題 → 子どもの体力・運動能力は依然として低く、子供が安全に自転車を乗れる場所を確保することで気軽に自転車を利用してもらい健康増進(体力向上)を推進させたい

⑩の課題 → 公共交通機関に駐輪場を整備し自転車+公共交通機関の利用を促進させ、CO2排出量及び交通渋滞を緩和させたい

⑪の課題 → 災害時、平野部を徒歩だけではなく自転車も活用させることで早く安全に避難させたい

⑫の課題 → 企業へ呼びかけ、通勤手段を自動車から自転車利用に転換させ、CO2排出量及び交通渋滞を緩和させたい

⑬の課題 → 外国人観光客のニーズが体験型観光へと変化していることに対応させたい、サイクリストが立ち寄れる設備がなく不便であることを解消させたい

という流れになるかと思います。

(表現を変えるとCO2排出量、交通渋滞緩和、健康増進すべてに使える課題もあることがわかります)

 

上記から【課題】【解決策】を整理すると

・(環境の観点) 課題が「環境保全」 → 解決策は①②④⑤⑩⑫     

・(交通の観点) 課題が「交通混雑緩和」 → 解決策は①②④⑤⑩⑫  

・(健康の観点) 課題が「健康増進推進」 → 解決策は③⑥⑦⑧⑨ 

・(安全の観点) 課題が「安全性向上」 → 解決策は①②④⑤⑦⑪ 

・(観光の観点) 課題が「観光立国推進」 → 解決策は⑬

という整理になるかと思います。(強引なところもありますね・・・また、環境と交通はどっちにでも使えるようになってしまいました・・・)

 

(1)の問題文は「課題について多面的な観点から抽出し、その内容を観点とともに示せ」なので、

①環境の観点から環境保全を推進することが課題 

②交通の観点から交通渋滞を緩和することが課題

③健康の観点から健康増進を推進することが課題

④安全の観点から自転車の安全性を向上することが課題

⑤観光の観点から観光立国を推進することが課題

 

の5つの課題を抽出し、各々を分析(背景・現況・問題発生要因・制約要因など)することで記述できるかと思います。(もちろん5つ全部を記述する必要はありませんし、④は問題文から少しズレている印象ですので除外してもよいでしょう)

 

(2)の問題文は「前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ」であるが、最も重要としなければならないものは特になく、複数の解決策がある課題は①②③であるので、これらの中から記述しやすく、もっともらしい理由が述べられるものを抽出すればよいかと思います。

 

(3)の問題文は「前問(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ」となっており、複数の解決策に共通して新たに生じうるリスクをまずは考えなくてはいけません。

共通して生じるリスク候補は「費用(コスト)関連」「人材不足関連」「ノウハウ関連」などが考えられますが、解決策に合わせて考えましょう。

また、専門技術を踏まえた話題にする必要がありますので、道路専門技術に関するキーワードも含めることになりそうです。

本来はリスクも対策も専門技術に関する話題が理想ですが、うまく思いつかない場合は対策だけでも専門技術に関する話題を取り入れましょう。

 

リスクが「費用(コスト)関連」 → 対策は「国支援」「民間資金活用」「選択と集中で対象を絞る」など

リスクが「人材不足関連」 → 対策は「ナレッジマネジメント活用」「生産性向上」「民間コンサル支援」など

リスクが「ノウハウ関連」 → 対策は「国支援」「民間コンサル支援」「社会実験」「試行運用」など

など色々なパターンを準備しておきましょう。

この部分はあらかじめ知識の引き出しを増やしておき、試験本番、臨機応変に対応すべきところだと思います。

以上が問題文を把握し、記述するまでの頭の中の状態です。

 

 

〇記述例

実際の記述例を簡単に記載します。

合格論文ではなく論文イメージであり、たくさんある例の1つです。詳細はご自身で調べ考え、第三者に見てもらうことで上達します。あくまでも参考資料であり、これを暗記して対応しようとしても合格は不可能です

 

1.課題

(1)環境保全

我が国において、自動車による交通が二酸化炭素等の環境に深刻な影響を及ぼす物質及び騒音・振動を発生させていることが問題となっている。そのため、自動車依存から自転車利用へ転換し、環境保全に寄与することが求められている。しかし、自転車乗車中の死者数の占める割合は増加傾向にあること、自動車の違法駐車や荷捌き車両が自転車の通行を阻害していることで自転車活用を積極的に行うことが困難な状況である。また、自転車と公共交通機関を組み合わせることで自動車依存から脱却したいが、自転車を駐車するスペースがなく活用できない状況でもある。

したがって、環境の観点から、自動車への依存度を低減し自転車の活用を推進することで、環境保全を推進することが課題である。

(2)交通渋滞

我が国において、道路交通需要の伸びや非効率的な自動車の使われ方により、道路交通渋滞の状況は深刻化している。そのため、自動車依存から自転車利用へ転換し、交通渋滞緩和に寄与することが求められている。しかし、安全性が確保されていない自転車を排除し安全性を高めることができないこと、自転車の安全利用(交通ルール)や定期点検に関する知識不足を解消することができないことで自転車活用を積極的に行うことが困難な状況である。また、通勤手段を自動車から自転車に転換させる呼びかけ運動も少ない状況でもある。

 したがって、交通の観点から、自動車への依存度を低減し自転車の活用を推進することで、交通渋滞を緩和することが課題である。

(3)健康増進

超高齢社会へと向かっている我が国にとって、生活習慣病や子供たちの基礎的運動能力低下を予防するための施策が急務となっている。そのため、自動車依存から自転車利用へ転換し、健康増進に寄与することが求められている。しかし、自転車を所有していなくても気軽に自転車を利用できる環境が整備されていないこと、自転車を利用した健康づくりに関しての興味をもたせることができていないことで自転車活用を積極的に行うことが困難な状況である。また、子供が安全に自転車を乗れる場所を確保できていない状況でもある。

 したがって、健康の観点から、自動車への依存度を低減し自転車の活用を推進することで、健康増進を推進することが課題である。

2.解決策

 上記課題のうち最も重要と考える課題は「(1)環境保全」である。なぜなら・・・(理由を記述)。以下にその解決策を示す。

(1)自転車専用道路の整備

 環境保全を推進するための解決策の1つとして挙げられることは、自転車が通行するエリアと歩行者、自動車などが通行するエリアを分離させることである。なぜなら、通行エリアを分離することで他の移動手段との接触が避けられ、自転車乗車中における死亡事故を大幅に減少させることができ、それに伴い自転車活用を推進させ環境保全に寄与することができるからである。

具体的には、自転車専用道路の整備を推進・・・(具体的説明)。さらに、無電柱化の促進や生活道路における通過交通を抑制する・・・。

(2)路外駐車場の整備

 環境保全を推進するための解決策の1つとして挙げられることは、違法駐車や荷捌き車両によって自転車通行帯を妨げないようにすることである。なぜなら、自転車通行を阻害する自動車を排除することで安全にスムーズに走行させることができ、それに伴い自転車活用を推進させ環境保全に寄与することができるからである。

具体的には、路外駐車場を整備することで・・・(具体的説明)。さらに、違法駐車の取り締まりを強化すること・・・。

(3)公共交通機関との連携の促進(駐輪場整備促進)

 環境保全を推進するための解決策の1つとして挙げられることは、公共交通機関と自転車の連携を促進させることである。なぜなら、公共交通機関と自転車を連携することによって移動手段の選択肢を増やすことができ、それに伴い自転車活用を推進させ環境保全に寄与することができるからである。

具体的には、公共交通機関付近に駐輪場を整備し、・・・(具体的説明)。

 

※他にもたくさん解決策はあります。

 

3.リスクと対応

上記で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとして挙げられることは、コスト不足である。なぜなら、上記解決策はハード整備に頼るものであり、財源不足である地方公共団体では実施することが困難だからである。

上記リスクの対策として挙げられることは、国による支援や民間資金を活用することである。単純な経済支援だけでなく、無電中化における低コスト手法や道路空間の再配分など整備手法の技術や知恵、工夫も取り込むことでスムーズに進めていくことができる。

 

以上

 

〇まとめ

 ざっとまとめてみましたが、これが「正解」というわけではありません。他にもっとよい正解があるかと思います。色々な情報を集め、多くの意見に耳を傾けることによって、更なるレベルアップに努めてください。

 

※最後まで読んでいただきありがとうございます。