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【A評価論文 令和3年度 建設部門 Ⅰ-2 その1】

筆記試験合格者【Tさま】からA評価論文をご提供していただきました。

受験生の方はぜひ参考にしてください。

 

 

(1)多面的な課題

(1)-1想定規模を上回る災害のハード・ソフト対策

 近年の激甚な豪雨等の災害は毎年のように、各地で発生している。

 このような、大規模な外力に対しては、河川堤防や下水道等のハード対策のみでは防ぎきれない。

 このため、ハード、ソフトを一体とした対策を各分野の関係者で実施することが、国民の生命及び財産を守る観点から重要な課題である。

(1)-2施設の維持管理

 我が国の河川堤防や橋梁等の施設は、高度経済成長期に集中的に建設されており、今後、一斉に老朽化を迎える。

 老朽化施設を、不具合が生じてから対処する事後保全による管理を行った場合、災害時の弱点となり被害が拡大する恐れがある。

 このため、常時の点検や、定期点検、診断により、補修・修繕を行う予防保全型維持管理により、施設の管理水準を確保することが、施設の安全性確保の観点から重要な課題である。 

(1)-3防災の担い手確保

 災害時の早期啓開や、災害復旧を行い地域の守り手である建設産業の担い手不足が深刻化している。

 原因として、他産業と比較して低賃金、長時間労働、危険作業等、労働環境が低水準であるためと考えられる。

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 また、労働集約型であり生産性が低いことも理由と考えられる。

 このため、労務単価や積算基準見直しや、新技術導入、働き方改革等による労働環境の改善実施が、防災の担い手確保の観点から重要な課題である。

(2)最も重要な課題と複数の解決策

(2)-1最も重要な課題

 (1)-1の課題が国民の安全・安心確保や社会経済被害の最小化のために最も重要な課題と考える。

(2)-2複数の解決策

①「流域治水対策」の推進

 激甚な豪雨災害を、河川堤防や下水道などの防災施設のみで防ぐことは困難であり、あらゆる関係者が分野横断的に取り組む流域治水対策の実施が必要である。

 具体的には、利水ダムやため池の貯水活用、雨水貯留設備の整備等を行う。安全な区域への居住地誘導を実施する。

また、無居住の浸水想定区域を遊水池としての活用を検討する。

②DXの活用

 DX技術を災害時に活用することは、迅速な災害対応のために必要不可欠である。

 具体的には、ドローンや小型衛星活用による被災状況把握、ETC2.0等のビッグデータ活用による避難路等の情報提供を行う。

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③道路ネットワークの耐災害性強化

 災害時の、早期救急・救命活動や物資輸送等の為に道路ネットワークの耐災害性強化を図る必要がある。

 具体的には、ミッシングリンク解消や、暫定2車線区間の4車線化による代替性確保や、長期通行止めリスクの低減を行う。

(3)新たなリスクとその対策

(3)-1新たなリスク

 それぞれの対策を実施するためには膨大な予算が必要となり、整備効果発現が困難となる可能性がある。

(3)-2対策

 対策の重要度、整備効果等を検討の上、優先順位を定めて選択と集中による計画的な整備により、ストック効果の最大化を図る。

(4)技術者として必要となる要件

 災害対策の実施に当たって、技術者として、国民の安全・安心を第一に考慮して取り組む必要がある。

 このためには、業務の品質確保や法令遵守に努めるとともに、国民への説明責任を果たすことが重要である。

 また、社会の持続性確保のためには、環境へ配慮して業務を行うとともに、PDCAサイクル実施により、評価、改善によるスパイラルアップを図ることが重要と考える。                 

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※コメント

課題、解決策が明確に記述されていますし、非常に読みやすい論文に仕上がっています。

文字配分としては、ちょっと課題が多く、リスク対策が少ないところが気になります。

必須科目Ⅰの場合、課題は最初の1枚で納めたいところです。

全体としては危なげなくA評価を取れた論文でしょう。