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【A評価論文 令和3年度 建設部門 Ⅰ-2 その2】

筆記試験合格者【Sさま】からA評価論文をご提供していただきました。

受験生の方はぜひ参考にしてください。

 

 

1.風水害に対し,防止・軽減するための課題

(1)ハード+ソフトの一体的実施による多重防御

 令和元年東日本台風・令和2年7月豪雨・令和3年7月梅雨前線豪雨等の激甚化・頻発化する大規模自然災害による被災により,我が国は,ハード対策の限界が露呈している。

 よって,国民の生活基盤を守る観点から,ハード対策に加えて,ソフト対策による減災を一体的に実施する多重防御が課題である。

(2)災害情報の予測時間や予測精度の向

 これまでの災害情報の予測は数時間先までしか予測できず,避難までの時間が不足していた。また土砂災害警戒情報のメッシュは広く,居住地の危険性を認識させづらかった。

 よって,災害に備える観点から,災害情報の予測時間や予測精度の向上が課題である。豪雨時の洪水予測時間の前倒しや土砂災害警戒情報の高精度化により,避難への準備時間が確保され,居住地の危険性を認識することができるようになる。

(3)被害対象減少のための土地利用規制・誘導

 これまでの土地利用規制・誘導は災害ハザードエリアを強力に意識した物ではなかったので,結果的に多くの住民の生活基盤を失う一因となっていた。

 よって,災害に対する都市のあり方の観点から,被害対象減少のための土地利用規制・誘導が課題である。

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 災害ハザードエリアへの多人数利用施設の立地規制や市町村の立地適正化計画策定の促進により災害時の被害対象が減少する。

2.最も重要な課題と複数の解決策(効果大より(1)が最も重要)

(1)災害への事前準備

 粘り強い構造の採用と1人1人の居住地の危険性の認識により,災害への事前準備を行う。

 具体的には,河川堤防のAs舗装化や堤防裏法尻のブロック補強で破堤までの時間を稼ぐ。また,既存ダムのかさ上げや放流設備増強により洪水への事前準備を行う。更に,ハザードマップやタイムラインの各戸への周知配布により居住地の危険性を事前に認識させる。

(2)災害発生時の対処

 災害発生予想時には,既存インフラの災害時運用を行い,災害発生中には,危機情報を効果的に発信する。

 具体的には,災害発生予想時,既存多目的ダムの利水容量の事前放流や緊急輸送道路上の踏切の優先解放を行う。また,災害発生中には,ブロードキャスト型・プッシュ型による災害情報を繰り返し発信し,危機意識を居住民に伝え,避難を促す。

3.新たに生じうるリスクと対応策

(1)新たに生じうるリスク

 災害情報を受けていてもそれが早くなければ適切な避難は難しい。また,繰り返し避難を呼びかけても,

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住民に危機意識がなければ避難に結びつかないことが新たに生じうるリスクである。

(2)リスクへの対応策

 これへの対応策は,「恐れ段階」の災害情報発信と居住民とのリスクコミュニケーションである。災害の恐れが想定された段階で早期に災害情報を発信し避難を促す。また住民目線に立ち,ワークショップ等を通して自分達の居住地のリスクを認識させ避難を促す。

4.業務を遂行する際,必要となる要件・留意点

(1)技術者倫理としての観点

 河川堤防の補強やダム再生では,コスト・工期・機能確保の3つがトレードオフになる場合があることを認識することが要件である。その場合でも機能確保(公共の安全)を最優先事項と意識することが留意点である。

(2)社会の持続性の観点

 上記のハード整備においては,当該地の生物生態系に影響を与えてしまうことがあることを認識することが要件である。その場合でも,動植物の生息生育環境への影響を可能な限り最小化し,確実にその保全を図ることが留意点である。                 

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※コメント

課題、解決策が明確に記述されていますし、非常に読みやすい論文に仕上がっています。

課題部分において、観点、課題を記述したあとに軽く将来展望を記述する独特の記述形式です。

重要課題の理由が一言で終わらせているところも面白い工夫です。(加点が減るかもしれませんが)

全体としては危なげなくA評価を取れた論文でしょう。