〇問題文
令和6年能登半島地震では、半島特有の地形的制約のもと、多数の斜面・法面崩壊が同時多発的に発生し、道路ネットワークが広範囲にわたり寸断された。その結果、災害における道路の脆弱性が改めて浮き彫りとなった。
こうした事態を受け、令和6年能登半島地震を踏まえた緊急提言が示されるとともに、令和7年4月には、同地震の教訓を踏まえ、災害対応力の強化を目的とした道路法等の一部改正が行われた。
また、令和7年6月には第1次国土強靭化実施中期計画が閣議決定され、激甚化・頻発化する大規模地震に対応する施策が位置付けられた。
このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)今後は全国どこでも大規模災害が起こり得ることを前提に、道路の災害対応や機能確保に関して、道路に携わる技術者として、多面的な観点から3つの技術課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その技術課題の内容を示せ。ただし、老朽化に伴う維持管理の観点は除く。
(2)前問(1)で抽出した技術課題のうち、最も重要と考える技術課題を1つ挙げ、その技術課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考え方を示せ。
〇問題文把握
まずはしっかり問題文を読み込み、背景・現況などを把握しましょう。
背景:令和6年能登半島地震で災害における道路の脆弱性が改めて浮き彫りとなった。
現況:令和6年能登半島地震を踏まえた緊急提言、道路法等の一部改正、第1次国土強靭化実施中期計画により激甚化・頻発化する大規模地震に対応する施策が位置付けられた。
という情報が問題文から読み取れます。
大規模災害が本問の中心テーマであると考えられます。
(1)の問題文では、
例年どおり「多面的な観点から3つの技術課題を抽出し、それぞれの観点を明記する」形式でした。ただし、必須科目Ⅰと同様に「技術課題」と明記されているため、人手不足や予算不足をそのまま課題とするのではなく、それらの制約を踏まえて、技術的に何を改善し、どのような機能を実現すべきかを示す必要があるでしょう。
参考資料は、問題文に示された緊急提言、道路法等の一部改正、第1次国土強靱化実施中期計画が考えられます。これらの資料から、課題、解決策、リスク対策を整理できそうです。
令和6年能登半島地震を踏まえた緊急提言には、
課題候補として、
①道路ネットワークの寸断による復旧活動等の困難化
②アクセスルートとして機能すべき高規格道路の被災
③道路啓開の実効性の向上
解決策候補として、
①地域安全保障のエッセンシャルネットワークの早期確立
②拠点機能の強化
③データ活用による災害時交通マネジメントの高度化
④災害に備えた体制の強化
⑤地域の新たな価値の創出につなげる道路空間の活用
道路法等の一部改正には、能登半島地震を踏まえた災害対応の深化として、
①初動対応の強化
②災害時における国による機動的な支援
③防災拠点としての自動車駐車場の機能強化
第1次国土強靭化実施中期計画は、道路以外のことが多く記載されていますが、道路に関連する部分を抽出すると、
①道路ネットワークの機能強化対策
②道路施設の老朽化対策
③渡河部の橋梁や河川に隣接する道路構造物の流出防止対策
④電柱倒壊リスクがある市街地等の緊急輸送道路の無電柱化対策
⑤道路の法面・盛土の土砂災害防止対策
⑥道路システムのDXによる道路管理及び情報収集等の体制強化対策
⑦道路の雪寒対策
⑧道の駅における防災拠点機能強化
⑨道路橋梁の耐震機能強化
など
上記を活用することにより、課題、解決策を導くことができそうです。
ただ、問題文では「全国どこでも大規模災害が起こり得ることを前提」「道路の災害対応や機能確保に関して」と指定されていますし、「老朽化に伴う維持管理の観点は除く」という注意書きもあります。
①能登半島地震だけに限定しない
②地震災害に限定しない
③道路に関する内容に限定する
④災害対応と機能確保に焦点を当てる
⑤老朽化に伴う維持管理を論点にしない
という5つの条件に注意する必要があるでしょう。
本ブログでは、これらの資料に加えて、「令和8年度 道路関係予算概要」の基本方針1 防災・減災、国土強靭化も参考にしながら、課題、解決策を整理してみようと思います。
課題、解決策候補になりそうなものは、
課題① 災害に強い国土幹線道路ネットワークの構築(高規格道路における機能確保の観点)
解決策 地域安全保障のエッセンシャルネットワークの早期形成
暫定2車線区間の4車線化
課題② 緊急輸送道路における防災・減災対策(一般道路における機能確保の観点)
解決策 河川に隣接する道路構造物の流出防止対策
道路橋の耐震補強
積雪寒冷特別地域の舗装損傷への対策
道路の法面・盛土の土砂災害防止対策
無電柱化の推進
課題③ 発災後の早期交通確保に向けた初動対応の強化、被災状況の迅速な情報収集・提供等の取組(災害対応の観点)
解決策 道路啓開の実効性向上
迅速な情報収集・提供
早期交通確保支援
課題④ 冬期道路交通確保のために、躊躇無い通行止めと早期解放等(大雪災害対応の観点)
解決策 冬期道路交通確保
※観点の表現は一例です。答案では、各課題との対応関係が明確になるように設定してください。
上記のように整理して論文構成を検討すれば、観点、課題、解決策の対応関係が明確になり、論述の一貫性を高めることができるでしょう。
(2)の問題文は「抽出した技術課題のうち最も重要と考える技術課題を1つ挙げ、その技術課題に対する複数の解決策を示せ」となっています。
最重要課題は、課題の広域性、被災時の影響度、代替手段の有無、解決策の実現可能性を踏まえて選定するとよいでしょう。いずれの課題を選んでも、選定理由を明確にし、複数の解決策とその効果を一貫して説明できれば問題ないかと思います。実際の答案では、自身が技術的根拠を示しやすく、さらに実施後のリスクと対応策まで論理的に展開できる課題を選ぶことが重要となるでしょう。
(3)の問題文は「すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ」となっています。
・すべての解決策に関連するリスク
・解決策を実行したら新たに発生するリスクであること(実行しなかったら発生しないもの)
という条件です。
採点委員は採点マニュアルに沿って点数を付けているものと考えられます。
ということは、オリジナル案ではなく、公表資料で示されている懸念事項やリスク、対応策を参照し、解決策との因果関係を説明できれば、論述の客観性と説得力を高められると考えられます。
資料の最後の方に「あとがき」や「今後のあり方」「検討事項」などが記載されていることが多いので、そちらを熟読しておくと高得点に結びつくでしょう。
令和6年能登半島地震を踏まえた緊急提言では、3.今後の道路政策への緊急提言(6)その他
第1次国土強靭化実施中期計画では、第5章 フォローアップと計画の見直し
がリスク対策の参考となりそうです。
ちなみに一般論で攻める場合は
リスクが「費用(コスト)関連」 → 対策は「国支援」「民間資金活用」「選択と集中で対象を絞る」など
リスクが「人材不足関連」 → 対策は「ナレッジマネジメント活用」「生産性向上」「民間コンサル支援」など
リスクが「ノウハウ関連」 → 対策は「国支援」「民間コンサル支援」「社会実験」「試行運用」など
リスクが「時間関連」 → 対策は「積極的な国主導によるスピードアップ」など
などのパターンも準備しておきましょう。
以上が問題文を把握し、記述するまでの頭の中の状態です。
〇記述例
実際の記述例を簡単に記載します。
(合格論文ではなく論文イメージであり、たくさんある例の1つです。詳細はご自身で調べ考え、第三者に見てもらうことで上達します。あくまでも参考例(資料抜粋例、文字数無視)であり、これを暗記して対応しようとしても合格はできません)
1.課題
(1)災害に強い道路ネットワークの構築
大規模災害が発生したとき、道路ネットワークの機能が確保されていることで、孤立集落を防ぎ、ライフラインの復旧などを円滑に進めることができる。特に、高規格道路は、重要物流道路として位置づけられており、復興の速度に影響を及ぼす重要な道路である。しかし、高規格幹線道路の全体計画14,000kmの約1割が未整備区間であり、災害に強い道路ネットワークの機能が確保されていない状況である。また、暫定2車線区間は法面崩落などの災害が発生すると、全面通行止めの可能性が高いが、現在約3,000kmの暫定2車線区間があり、道路ネットワークの機能が確保されていない状況である。
したがって、高規格道路における機能確保の観点から、災害に強い道路ネットワークを構築することが課題である。
(2)緊急輸送道路における防災・減災対策
大規模災害が発生したとき、緊急輸送道路の機能が確保されていることで、緊急車両の通行や被災地域への迅速な支援活動などを円滑に進めることができる。しかし、一般道路では、渡河部の橋梁や河川に隣接する道路構造物の流出防止対策が十分ではなく、災害時に緊急輸送道路の機能を失うおそれがある。また、法面・盛土の土砂災害防止対策も十分ではなく、斜面崩壊や盛土崩壊による道路寸断が懸念される。
したがって、一般道路における機能確保の観点から、緊急輸送道路における防災・減災対策を推進することが課題である。
(3)初動対応の強化や被災状況の迅速な情報収集・提供の取組
大規模災害が発生したとき、迅速な初動対応や情報収集・提供などの災害対応ができることで、被害の拡大を抑え、道路啓開や救援活動を早期に開始できる。しかし、初動対応として重要な道路啓開計画が未策定の地方自治体があり、発災直後の役割分担や作業手順が不明確となるおそれがある。また、ドローンや衛星等を活用して被災情報を迅速に収集・提供する体制が十分に構築されておらず、道路管理者間の情報連携や利用者への情報提供が遅れることも懸念される。
したがって、災害対応の観点から、初動対応の強化や被災状況の迅速な情報収集・提供の取組を推進することが課題である。
2.解決策
上記課題のうち最も重要と考える課題は「(1)災害に強い道路ネットワークの構築」である。なぜなら、高規格道路は救命・救援、物資輸送、復旧・復興を支える基幹的な交通軸であり、寸断時の社会的影響が広域かつ甚大となるからである。以下にその解決策を示す。
(1)地域安全保障のエッセンシャルネットワークの早期形成
災害に強い道路ネットワークを構築するための解決策の1つとして挙げられることは、地域安全保障のエッセンシャルネットワークを早期形成することである。なぜなら、・・・(簡単に理由を述べる)。
具体的には、未整備区間の高規格道路を早期整備するとともに、並行する高規格道路と直轄国道とのダブルネットワークを強化し、災害時の代替経路を確保する。また、・・・
(2)暫定2車線区間の4車線化
災害に強い道路ネットワークを構築するための解決策の1つとして挙げられることは、暫定2車線区間を4車線化することである。なぜなら、・・・(簡単に理由を述べる)。
具体的には、未事業化の暫定2車線区間のうち、時間信頼性の確保、事故防止、ネットワークの代替性確保などから優先整備区間を選定し、財源の確保状況を踏まえ、順次4車線化を事業化していく。また、・・・
3.リスクと対策
上記の解決策を実行することにより、災害に強い道路ネットワークの構築が期待できる。一方、新規整備や4車線化を優先区間に集中させた場合、整備対象外となった地域との防災機能の格差が拡大し、災害時の代替性が地域によって不均衡になるリスクが考えられる。
上記リスクへの対策として、災害リスク、重要拠点へのアクセス、迂回路の有無等を踏まえて計画と優先順位を定期的に見直す。さらに、整備対象外の区間では、道路啓開計画や情報提供の強化等の代替措置を組み合わせ、地域間の防災機能の格差を抑えるためのフォローアップを実施する。
以上
※内容は資料のコピペなので、実際はご自身の言葉に直して説明してください。
〇まとめ
以上、問題文の読み取り方と記述の組立て方を整理しました。
上記は解答例の一つであり、唯一の正解ではありません。
関連資料や合格論文を幅広く確認し、多様な見方を取り入れながら、自分の専門分野に即した論述へ発展させてください。知識の引き出しを増やし、課題、解決策、リスク対策の因果関係を自分の言葉で説明できるようにすることが、実践力の向上につながります。
※最後まで読んでいただきありがとうございます。