〇問題文
今後、人口減少が見込まれる我が国において、物流をはじめとする社会インフラを維持し、持続的な発展を実現するためには、道路ネットワークの多機能化を図り、物流課題の解決に資する自動物流道路の実現が求められている。こうした状況の中で、自動物流道路に関する検討会等において、自動物流道路の実現に向けた検討が進められている。
(1)自動物流道路の実現に向けて、道路に携わる技術者として、多面的な観点から課題を3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
〇問題文把握
まずはしっかり問題文を読み込み、背景・現況などを把握しましょう。
背景:自動物流道路の実現が求められている。
現況:自動物流道路に関する検討会等において、自動物流道路の実現に向けた検討が進められている。
という情報が問題文から読み取れます。
自動物流道路が、本問の中心テーマであると考えられます。
(1)の問題文では、
「3つの課題を抽出」となっていますので、例年同様、課題を3つ挙げる必要があります。
また、「それぞれの観点を明記したうえで」となっていますので、例年同様、それぞれの観点をはっきり記述する必要があります。
必須Ⅰのように「技術課題」という名称変更、観点縛りはありませんでした。
ただ、Ⅲ-2問題は「技術課題」に変更されています。
この問題は「技術課題」という表現や観点の指定がないため、技術面に限らず、事業性、人材、制度、財源なども課題候補として大丈夫かと思います。ただ、道路技術者としての専門性を示すため、技術的な因果関係や道路分野との関連を明確に論述する必要はあるでしょう。
自動物流道路に関する検討会では、
令和6年7月25日に「自動物流道路のあり方 中間とりまとめ」
令和7年7月31日に「自動物流道路のあり方 最終とりまとめ」
が公表されています。
この2つの資料から、「課題」「解決策」「リスク対策」を抽出することで、問題文に沿った論理展開ができそうです。
ただ、「最終とりまとめ」には「課題」「解決策」に関連する記載が見当たらないと思われるため、
「課題」「解決策」は「中間とりまとめ」から、
「リスク対策」は「最終とりまとめ」(または「中間とりまとめ」)からとなりそうです。
「中間とりまとめ」には、
4.自動物流道路のコンセプト・方向性
(1)コンセプト
(2)実現に向けた検討の方向性
が記載されており、
(1)コンセプトとして、下記3つ
・物流の全体最適化
・物流モードのシームレスな連結
・カーボンニュートラル
(2)実現に向けた検討の方向性として、下記7つ
・想定ルート
・実験線の設定
・輸送対象荷物の規格
・道路空間の利活用
・拠点配置・機能
・搬送手法
・実施主体
となっています。
コンセプト → 観点
実現に向けた検討の方向性 → 課題
と考えるとスムーズに進みそうです。
ただ、両者はそのまま一対一に対応するとは限らないため、課題の背景、阻害要因などを補って論理的に整理する必要があるでしょう。
上記から課題候補となりそうなものは、
課題① 想定ルート(物流の全体最適化の観点)
課題② 輸送対象荷物の規格(物流モードのシームレスな連結の観点)
課題③ 搬送手法(カーボンニュートラルの観点)
解決策候補として挙げられそうなものは、
課題① 想定ルート
・東京―大阪間での設定
・物流拠点(貨物鉄道駅、港湾、空港、高速道路IC、物流倉庫等)間での設定
・地方部の物流拠点間での設定
・開発事業者等による再開発・再整備と連携した区間
課題② 輸送対象荷物の規格
・平面11型パレット
・高さ1,800mmまでの大きさ
・ICタグ・バーコードの装着が可能な設計
・
・
・
上記のように整理して論文構成を検討すれば、観点、課題、解決策の対応関係が明確になり、論述の一貫性を高めることができるでしょう。
こう考えると、技術的な課題、解決策にはならないので、「技術課題」で出題されても困りますね・・・
もし、「技術課題」が求められる場合には、道路構造、交通運用、維持管理、エネルギー供給、安全性などの専門的論点を加えて対応しましょう。
また、コンピテンシー改定に伴い、「データ・情報技術を活用」「ステークホルダーの意見」も評価されるため、これらを意識した論文内容が高評価となるでしょう。
(2)の問題文は「前問(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ」となっています。
最も重要としなければならないものは、理由を明確に示すことができれば、どれを選択してもOKかと思います。
解決策の内容が理解でき、論理展開がスムーズにいくものを選択すれば大丈夫かと思います。
実際は解決策として記述しやすいもの、リスク対策が記述しやすいものを選択することになるでしょう。
(3)の問題文は「すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ」となっています。
・すべての解決策に関連するリスク
・解決策を実行したら新たに発生するリスクであること(実行しなかったら発生しないもの)
という条件です。
これらを意識して作成すると評価が高くなるものと思われます。
採点委員は採点マニュアルに沿って点数を付けているものと考えられます。
ということは、オリジナル案ではなく、公表資料で示されている懸念事項やリスク、対応策を参照し、解決策との因果関係を説明できれば、論述の客観性と説得力を高められると考えられます。
資料の最後の方に「あとがき」や「今後のあり方」「検討事項」などが記載されていることが多いので、そちらを熟読しておくと高得点に結びつくでしょう。
中間とりまとめの資料では、
5.引き続き検討すべき課題
として、3つの課題(リスク対策)に関係しそうなものが記載されています。
最終とりまとめの資料では、
5.自動物流道路の事業実施のあり方
6.自動物流道路の今後の検討にあたって特に留意する点
にリスク対策に関係しそうなものが記載されています。
上記などを活用し、道路専門技術に関するキーワードも含めて記述できれば高い評価が期待できそうです。
特に浮かばないときは、「費用(コスト)関連」「人材不足関連」「ノウハウ関連」などで対応するしかありません。
一般的な懸念事項(リスク)と対応策の関係は
リスクが「費用(コスト)関連」 → 対策は「国支援」「民間資金活用」「選択と集中で対象を絞る」など
リスクが「人材不足関連」 → 対策は「ナレッジマネジメント活用」「生産性向上」「民間コンサル支援」など
リスクが「ノウハウ関連」 → 対策は「国支援」「民間コンサル支援」「社会実験」「試行運用」など
リスクが「時間関連」 → 対策は「積極的な国主導によるスピードアップ」など
など色々なパターンを準備しておきましょう。
この部分はあらかじめ知識の引き出しを増やしておき、試験本番、臨機応変に対応すべきところだと思います。
以上が問題文を把握し、記述するまでの頭の中の状態です。
〇記述例
実際の記述例を簡単に記載します。
(合格論文ではなく論文イメージであり、たくさんある例の1つです。詳細はご自身で調べ考え、第三者に見てもらうことで上達します。あくまでも参考例(資料抜粋例、文字数無視)であり、これを暗記して対応しようとしても合格はできません)
1.課題
(1)想定ルートの設定
自動物流道路を実現し、徹底した省人化・無人化及び輸送効率向上により物流の生産性を向上させ、物流の人手不足を解消し、物流を持続可能なものとしたい。また、自動物流道路の導入をきっかけに、トータルの物流サービスについて競争から戦略的協調へ移行を促し、物流全体の最適化を図りたい。そのため、自動物流道路の実現を早期に進めたいが、需要や事業性・実現可能性の分析が十分に進んでおらず、想定ルートの具体的な区間が設定できないため、自動物流道路の実現に向けた検討が進展していない状況である。
したがって、物流の全体最適化の観点から、自動物流道路の想定ルートを設定することが課題である。
(2)輸送対象荷物の規格の設定
トラック輸送からのモーダルシフトは、既存の鉄道輸送、海上輸送、航空輸送のみにとらわれるのではなく、自動物流道路を新たなモードの一つとして位置づけ、トラック輸送をサポートすることで、物流モードのシームレスな連結を図りたい。そのため、自動物流道路の対象とする荷物は、拠点での積替えの自動化・機械化によるスムーズな実施を考慮すると、統一した規格の採用が必要であるが、自動化により人的リソースの制約が離れた場合の検討が不十分であり、物流の小口・多頻度化の進行、積載効率、他モードとの役割分担の視点も踏まえた検討が進んでいない状況である。
したがって、物流モードのシームレスな連結の観点から、輸送対象荷物の規格を設定することが課題である。
(3)搬送手法の確立
カーボンニュートラルという社会課題の解決に貢献する公共性の高いプロジェクトとすべきであり、環境負荷を最小限に抑制するため、自動物流道路での輸送については、低炭素技術を導入し、クリーンエネルギーの活用を前提としたハード設計とするとともに、更なる技術開発を促し、エネルギー利用の効率化を追求したい。そのため、自動物流道路で走行する自動輸送カートは、クリーンエネルギーを活用することや、エネルギー利用の効率化を図ること、自動荷役に対応した設計とすること、走行中給電などの最新技術を取り入れたものとしたいが、その開発が遅れている状況である。
したがって、カーボンニュートラルの観点から、最新技術を取り入れた搬送手法を確立することが課題である。
2.解決策
上記課題のうち最も重要と考える課題は「(1)想定ルートの設定」である。なぜなら、想定ルートは、需要、整備効果、事業性、既存道路交通への影響などを検討する基礎となり、輸送対象荷物の規格や搬送手法の具体化にも直結するためである。以下にその解決策を示す。
(1)東京―大阪間での設定
自動物流道路の想定ルートの設定に対する解決策の1つとして挙げられることは、東京―大阪間で設定することである。なぜなら、物流量が最も多く、我が国最大の大動脈であり、効果の最大化が期待できる区間だからである。
具体的には、東京―大阪間での設定を念頭に、段階的な運用開始も含め、実現方法を検討する。その際、一部区間の運用でも効果が発揮されるよう区間設定し、第一期区間は、物流量も考慮しつつ、大都市近郊の特に渋滞が発生する区間から構築する。
(2)物流拠点間での設定
自動物流道路の想定ルートの設定に対する解決策の1つとして挙げられることは、物流拠点間で設定することである。なぜなら、・・・(簡単に理由を述べる)。
具体的には、貨物鉄道駅、港湾、空港、高速道路IC、物流倉庫等の物流拠点間での設定を検討する。具体的な区間の設定に当たっては我が国の物流拠点の国際競争力確保のため、物流拠点の機能・価値を向上させるような区間を検討する。
(3)地方部の物流拠点間での設定
自動物流道路の想定ルートの設定に対する解決策の1つとして挙げられることは、地方部の物流拠点間で設定することである。なぜなら、・・・(簡単に理由を述べる)。
具体的には、交通量が比較的小さな路線でも大きな輸送量を担う路線があり、我が国の生活を支える物流の維持という視点も考慮して区間を検討する。
3.リスクと対応策
上記解決策を実施することで、想定ルートは設定されるが、自動物流道路の構築により構造面から既存の道路交通への影響、拠点の設置により新たな交通需要が発生することによる周辺の道路交通への影響が生じるリスクが考えられる。
上記リスクの対策として、道路交通や各物流モード、複合一貫輸送、さらには物流全体に与える効果・影響について、交通分析、物流事業者・荷主等へのヒアリングなどにより、詳細に分析を行う。具体的には、交通需要予測や交通シミュレーションを用いて、既存道路の交通容量、交差点やインターチェンジの処理能力、物流拠点周辺の混雑への影響を定量的に評価する。さらに、物流事業者や荷主へのヒアリングによって貨物流動を把握し、段階整備や社会実験を通じて予測結果を検証したうえで、アクセス道路の改良、拠点出入口の分散、交通運用の最適化を実施する。
以上
※内容は資料のコピペなので、実際はご自身の言葉に直して説明してください。
〇まとめ
以上、問題文の読み取り方と記述の組立て方を整理しました。
上記は解答例の一つであり、唯一の正解ではありません。
関連資料や合格論文を幅広く確認し、多様な見方を取り入れながら、自分の専門分野に即した論述へ発展させてください。知識の引き出しを増やし、課題、解決策、リスク対策の因果関係を自分の言葉で説明できるようにすることが、実践力の向上につながります。
※最後まで読んでいただきありがとうございます。