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【令和5年度 技術士第二次試験問題 建設部門 道路科目 Ⅲ-2】について考える。【模範解答イメージあり】

〇問題文

近年、社会・経済情勢の変化や国民の価値観、ニーズの多様化に対応するため、高速道路のサービスエリア(SA)、パーキングエリア(PA)(以下「SA・PA」という。)は単に休憩するだけの機能だけでなく、多機能化が進んでいる。今後、高速道路が社会的ニーズの変化に対応した進化・改良を遂げていくためには、SA・PAについても、求められる機能などを考慮し、適時適切な対策を実施していく必要がある。このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。

(1)SA・PAについて、道路に携わる技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

 

 

〇問題文把握

まずはしっかり問題文を読み込み、背景・現況などを把握しましょう。

背景:近年、高速道路のサービスエリア、パーキングエリアは多機能化が進んでいる。

現況:今後、SA・PAについても、求められる機能などを考慮し、適時適切な対策を実施していく必要がある。

立場:道路技術者(細かい設定なし)

という情報が問題文から読み取れます。

最近の話題が求められていることに気をつければ特に注意することはないでしょう。

 

(1)の問題文では、

「多面的な観点から3つの課題を抽出」となっていますので、課題は3つです。

多くても少なくてもダメです。

また、「それぞれの観点を明記したうえで」となっていますので、それぞれの観点をはっきり記述する必要もあります。

最近の出題パターンと同様なので特に注意することはないですが。

 

(1)の課題を考えるとき、思いつく解決策を先に列挙しておくと展開が楽になります

ですが、この問題文は、令和5年2月3日に発表された「高速道路SA・PAにおける利便性向上の方向性 中間とりまとめ」そのものです。

無理に上記資料にこだわらなくても、最近の高速道路のSA・PAに関する話題であれば合格点がもらえるかと思います。

 

「高速道路SA・PAにおける利便性向上の方向性 中間とりまとめ」資料で挙げている【課題候補】は、

1.SA・PAにおける確実な休憩・休息機会の確保

2.新たな需要への対応

 

の2つになっています。

ですが、この仕分けだと課題が2つしか挙げられません。

3つ目を別の資料から探すか、または、もっと細分化して3つ以上に仕分けすることになりそうです。

今回は細分化して3つ以上に仕分けるため、【解決策候補】から【課題】を導く方法で進めます。

 

この資料で挙げている【解決策候補】は

①駐車容量・駐車効率の向上、大型車長時間駐車への対応

②休憩施設空白区間の解消

カーボンニュートラルへの対応

④将来の社会的要請への対応

 

となっています。

 

(1)の問題文は「多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ」なので、上記を利用して練り直すと、あくまでも例ですが

 

①大型車機会確保の観点から、駐車容量・駐車効率の向上、大型車長時間駐車への対応が課題 

②快適性の観点から、休憩施設空白区間の解消が課題

③持続可能性の観点から、カーボンニュートラルへの対応が課題

④将来需要の観点から、将来の社会的要請への対応が課題

(あいかわらず観点がイマイチですが・・・)

 

の4つの課題のうち3つを抽出し、各々を分析(背景・現況・問題発生要因・制約要因など)することで記述できるかと思います。

 

(2)の問題文は「抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ」になっていますが、最も重要としなければならないものは特にない気がします。ですが、複数を挙げるのが簡単なのは、課題①と④になっています。(課題②と③の場合は具体策を複数挙げることで対応することになります。)

 

資料より、

課題①「駐車容量・駐車効率の向上、大型車長時間駐車への対応」の解決策は

・駐車マスの拡充

・情報技術を活用したSA・PA混雑状況の把握・情報提供

・適正利用の効果的な広報の実施

・物流効率化の支援、労働環境改善への対応

・車種・駐車時間を限定した駐車マス等の整備

・駐車マスの予約・有料化

 

課題④「将来の社会的要請への対応」の解決策は

・高速道路におけるトラック輸送の効率化

・自動運転の支援

・MaaS への対応

 

となっています。

 

 

(3)の問題文は「すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ」となっています。

これは難しいですね・・・

一般論で攻めるのは難しい印象です。

リスク対策を記述できる解決策を選択する必要がありそうです。

こういう場合は「時代の変化」が有効かと思います。

今はこの解決策で良いけど、将来的には状況が変化するかもしれないリスクがあるので常にアップデートする必要があるという流れになります。

その他、「情報セキュリティ」なども有効かと思います。

専門技術を踏まえるのが難しいですが、上記のような対応も覚えておいて損はないかと思います。

 

ちなみに一般論で攻める場合は

リスクが「費用(コスト)関連」 → 対策は「国支援」「民間資金活用」「選択と集中で対象を絞る」など

リスクが「人材不足関連」 → 対策は「ナレッジマネジメント活用」「生産性向上」「民間コンサル支援」など

リスクが「ノウハウ関連」 → 対策は「国支援」「民間コンサル支援」「社会実験」「試行運用」など

リスクが「時間関連」 → 対策は「積極的な国主導によるスピードアップ」など

などのパターンも準備しておきましょう。

 

以上が問題文を把握し、記述するまでの頭の中の状態です。

 

 

〇記述例

実際の記述例を簡単に記載します。

合格論文ではなく論文イメージであり、たくさんある例の1つです。詳細はご自身で調べ考え、第三者に見てもらうことで上達します。あくまでも参考例(資料抜粋例、文字数無視)であり、これを暗記して対応しようとしても合格はできません

 

1.課題

(1)駐車容量・駐車効率の向上、大型車長時間駐車への対応

 全国のSA・PAにおいて、大型車は、平日で約5~7割、休日で全体の約1~2割の箇所で駐車マスが不足している。これまで駐車マスの増設や、小型車・大型車駐車マスの「兼用化」などのレイアウト変更で対応してきたが、依然として足りておらず、限られた敷地では、単純な駐車マスの増設やレイアウト変更には限界があり、敷地外への拡大や空間的な容量の活用が求められている。また、混雑が慢性的に発生しているSA・PAでは、満空情報板等により情報提供を行い、SA・PA相互の駐車場利用の平準化を図っているが、正確かつリアルタイムに混雑状況を把握するためには、面的かつ広範囲にカメラ等を整備しなければならず、高精度で安価な技術が求められている。また、改善基準告示の改正等により、トラックドライバーの時間管理が厳格化し「休息」のニーズが高まっていることや、時間調整等の「待機」する車両が存在するため、駐車マス不足を助長している利用実態を考慮した上で、車種や駐車時間に着目した効果的な対策が求められている。

 したがって、大型車機会確保の観点から、駐車容量・駐車効率の向上、大型車長時間駐車へ対応することが課題である。

(2)カーボンニュートラルへの対応

 国内では、2035年までに、乗用車新車販売で電動車100%を目標としている。そのため、高速道路会社と連携し、高速道路上のSA・PAに急速充電器、水素ステーションの増設を計画している。しかし、次世代自動車の普及促進に伴い、EV充電器や水素ステーションの更なるインフラ整備が求められ、SA・PAでの設置スペースの確保や充電待ちの削減等への対応が求められている。また、次世代自動車の普及については、関係省庁、自動車メーカー、充電事業者、高速道路会社などが連携して進めていくことが重要である。

 したがって、持続可能性の観点から、カーボンニュートラルに対応することが課題である。

(3)将来の社会的要請への対応

 トラックドライバーの労働環境改善や生産性向上を目的とした中継拠点として物流事業者と高速道路会社が協業によりコネクトエリア浜松の運営を開始するとともに、民間事業者がIC直結の基幹物流施設の計画を発表した。しかし、自動運転、隊列走行などを見据えた拠点整備には、物流事業者のニーズに沿った立地や設備、運営事業者、整備スキームのあり方についての整理が求められている。また、自動運転支援に必要な道路環境の整備に向けた検討・整備・検証等やMaaSに関する地域のニーズを把握しながら、引き続き、移動の選択肢の多様化や移動の利便性向上に向けた対応や地域社会の活性化や暮らしの向上に向けた対応が求められている。

 したがって、将来需要の観点から、将来の社会的要請に対応することが課題である。

 

2.解決策

 上記課題のうち最も重要と考える課題は「(1)駐車容量・駐車効率の向上、大型車長時間駐車への対応」である。なぜなら・・・(理由を記述)。以下にその解決策を示す。

(1)駐車マスの拡充

 駐車容量・駐車効率の向上、大型車長時間駐車への対応に対する解決策の1つとして挙げられることは、駐車マスの拡充である。なぜなら、・・・(理由を述べる)。

 具体的には、小型車駐車マスと大型車駐車マスの兼用化、Ⅴ字配列などの駐車場レイアウト変更を行う。また、SA・PA敷地内に園地部等活用可能な土地が存在する場合、駐車マスを増設し、活用可能な土地が存在しない場合は、高速道路本線の遊休地を活用した駐車マスなど、既存区域内で駐車場の駐車容量を増加させる。さらに、駐車場の立体構造化に取り組むことで駐車マスを拡充させる。

(2)情報技術を活用したSA・PA混雑状況の把握・情報提供

 駐車容量・駐車効率の向上、大型車長時間駐車への対応に対する解決策の1つとして挙げられることは、情報技術を活用したSA・PA混雑状況の把握・情報提供である。なぜなら、・・・(理由を述べる)。

 具体的には、ETCデータを活用した満空判定技術を活用するとともに、より正確な混雑状況を把握するための技術(画像処理技術や赤外線レーザーなど)の向上を図り、全ての駐車マスの利用状況を把握する。さらに、混雑情報の提供を路線単位で行うことで、並行路線のSA・PAへ利用の転換を図る。

(3)車種・駐車時間を限定した駐車マス等の整備

 駐車容量・駐車効率の向上、大型車長時間駐車への対応に対する解決策の1つとして挙げられることは、車種・駐車時間を限定した駐車マス等の整備である。なぜなら、・・・(理由を述べる)。

 具体的には、既設のSA・PAにおいて、休憩の機会を逸している車両が確実に駐車し、休憩できるように、大型車駐車マスの一部を短時間限定として整備する取組みを行う。また、現状混雑しているSA・PAにおいては、「休憩」と「休息」を目的とした車両が混在し、エリア内全体の駐車効率が低下しているため、高速道路に隣接し、かつ広範な土地が取得可能な場合、「休息」を目的とした大型車専用のSA・PAを新たに整備するとともに、複数縦列式(コラム式)などの採用も含め駐車容量を最大化・最適化する。

 

3.リスクと対策

 上記解決策を実施し、駐車容量・駐車効率の向上、大型車長時間駐車への対応を実施しても、時代の変化、ニーズの変化など、未来の高速道路及びSA・PAを取り巻く環境や技術革新等について正確に予測することは困難であり、そのため、具体的な施策について将来にわたり見通しを立てることができないリスクが新たに生じる可能性がある。

 上記リスクの対策として挙げられることは、協議会などを定期的に開催し、求められる機能を速やかに把握し、遅れることなくSA・PAを適切に進化・改良していくとともに、対応策を常にアップデートしていくことが重要である。

 

以上

 

〇まとめ

 ざっとまとめてみましたが、これが「正解」というわけではありません。他にもっとよい正解があるかと思います。色々な情報を集め、多くの意見に耳を傾けることによって、更なるレベルアップに努めてください。

 

※最後まで読んでいただきありがとうございます。