技術士第二次試験を受験するに当たって、覚えて(理解して)おきたいキーワードとして、今回は「国土幹線道路部会 中間答申」について記述します。
基本は国土交通省などのネット情報などを集約・抜粋したものです。
内容をきちんと理解することにより、どんな問題にも対応できるかと思います。
暗記をするのではなく、理解してこそ論文に活かせるようになります。
このキーワードが知識問題として出題されるわけではありません。
この記載内容を利用して必須科目Ⅰや選択科目Ⅲの論文を作成するための基礎知識をインプットするために活用してください。
リンク先は以下のとおりです。
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001417808.pdf
<国土幹線道路部会 中間答申 概要>
※資料には中間答申のポイントがパワポ2枚にまとめられていますので、そちらをご覧になっても問題ありません。
※以下、少し長文となっていますのでご注意を。
〇背景
持続可能な高速道路システムの構築に向けた制度等のあり方についての議論を踏まえ、令和3年8月4日に中間答申が公表された。
1.維持管理・修繕・更新への取組
(1)維持管理・修繕・更新の現状 ※このテーマにおける現状・背景として活用できそうです。
・5年に1度の近接目視による定期点検を実施
・平成17年の道路関係四公団民営化時点では見込まれていなかったものの、その後の知見として、構造物の更新の必要性や対処方針が明らかになったものについて、平成26年度より更新事業として追加し実施
(2)維持管理・修繕・更新に関する新たな知見 ※問題点などに活用できそうです。
・平成26年度からの定期点検の結果、修繕をしても十分に性能が回復しない事例があることが判明
・更新事業に伴う交通規制が与える社会的影響を軽減するための様々な工夫が蓄積された
(3)重視すべき視点 ※課題や解決策に活用できそうです。
1)最新の知見を踏まえた更新事業等の追加
・現に性能低下が著しい構造物については、更新事業を追加することにより、早期に抜本的な性能回復を図る
・現時点で十分に見通すことができない将来的な更新事業については、内容や規模が明らかになった段階で順次追加する
・更新事業によりリニューアルされた構造物についても、長期的なスパンで繰り返し更新事業を実施することが必要になることを想定しておく
・更新事業の実施にあたっては、当該箇所における交通課題等を効率的に解決するために、機能強化を合わせて実施
・ライフサイクルコスト最小化の観点から、更新事業の実施後も予防保全を適切に実施
2)更新工事が与える社会的影響の軽減
・必要に応じて交通シミュレーション等を行うことなどにより、地域の実情を踏まえ、通行止めを実施して集中的に工事を行うことも含めた適切な規制方法等を検討
・交通規制に関する広報の充実や料金施策等により、迂回路への誘導を実施
・交通需要マネジメントの方策とその効果について、知見を体系化し、ガイドライン等を策定
3)維持管理・修繕・更新に係るデータ活用や新技術の開発・導入等
・利用実態等のメンテナンスデータについて、道路管理者間でデータの互換性を高めるとともにデータの共有を進め、共同で研究する仕組みを構築
4)大型車利用の適正化による構造物の長寿命化
・大型車が構造物に与える影響について、データを用いた分析を深掘りし、分かりやすい形で国民へ情報発信
・新たな特殊車両通行許可システムやETC2.0を活用した取締り強化等により、老朽化した橋梁等を避けた経路への誘導を進め、適正な利用を促進
※維持管理・修繕・更新の話題が出題される確率はかなり高いです。今回の話題は高速道路中心ですが、上記のような内容を論じることができれば高得点に結びつくでしょう。
簡単な例(イメージ)
問題文テーマ → 高速道路の道路構造物の維持管理・修繕・更新
現状・背景 → 5年に1度の近接目視による定期点検を実施
問題点 → 定期点検の結果、修繕をしても十分に性能が回復しない事例があることが判明
課題 → 道路構造物の老朽化対策を適切に実施し、高速道路の機能を将来にわたり維持、継続する
解決策 → 最新の知見を踏まえた更新事業等を追加
のような論理展開が浮かびます。
2.高速道路の将来像
(1)これまでの高速道路の進化・改良 ※現状・背景として活用できそうです。
・経済の成長等と歩調を合わせるようにそのストックを充実させるとともに、社会・経済構造の変化や技術開発等に合わせて、段階的かつ継続的に機能の強化が図られてきた
・高速道路は自らの機能強化のみならず、走行する自動車の進化にも貢献
・その時代に現に生じていた課題への対応ではなく、将来を見据えた投資により、より快適で活力に満ちた一歩先の社会を創造する道路の進化を通じて、国民生活の豊かさや質の向上に大きく貢献
(2)現在の進化・改良の取組
1)高速道路を取り巻く国土・経済社会の現状 ※現状・課題として活用できそうです。
①自然災害の激甚化・頻発化
②人口減少・高齢化及びその影響の地域的偏在
③グローバル化に伴う国際競争の激化及び海外需要の拡大
④加速するインフラの老朽化
⑤デジタル革命の加速
⑥グリーン社会の実現に向けた産業構造や経済社会の変革
⑦ライフスタイルや価値観の多様化
2)現在の進化・改良の取組 ※解決策に活用できそうです。
①災害時にも機能する強靱な高速道路
災害時に「被災する道路」から「救援する強靱道路」への転換を推進
(具体的施策)
・暫定2車線区間の4車線化
・耐震補強
・洪水・津波発生時の緊急避難場所の確保のための避難施設等の整備
・SA・PAの防災拠点機能の強化
・のり面災害等の発生予測や災害発生時の迂回ルートなどの迅速な情報提供 等
②全てのドライバーが安全に安心して走ることができる高速道路
あらゆる事故の形態に的確に対応することにより、世界に誇る高い安全性を備えた高齢者等を含む全てのドライバーが安心して走ることができる高速道路を目指す
(具体的施策)
・暫定2車線区間におけるワイヤロープ等の区画柵の設置及び4車線化
・逆走や速度超過を未然に防止するための路車間連携による車両制御の実現
・除雪水準向上のための雪氷作業の自動化 等
③全てのドライバーが快適に利用できる高速道路
職業ドライバーや訪日外国人旅行者を含む全ての利用者にとって、使いやすく、快適な高速道路を目指す
(具体的施策)
・自動運転走行空間の提供
・キャッシュレス・タッチレス化の実現のためのETC専用化等
・高速・大容量・低遅延の通信環境の実現のための5G通信の活用
・SA・PAにおける駐車マスの拡充や駐車場予約システムの導入 等
④持続可能な社会の実現に資する高速道路
「国土交通グリーンチャレンジ」の取組を進め、温室効果ガス排出量を可能な限り削減
(具体的施策)
・電動車の普及支援のためのEV充電器や水素ステーション等の設置促進
・構造物の長寿命化のためのメンテナンスフリー新素材の活用
・渋滞を激減させるための環状道路等のネットワーク機能の強化 等
⑤地域の活力を生み出す高速道路
主要な空港・港湾・鉄道駅を含む経済活動上重要な拠点への速達性とアクセス性を向上させるとともに、高速トラック輸送の効率化や高速バスの利便性向上等に資する取組を推進。また、SA・PAと合わせて、道の駅等の高速道路外の休憩施設の活用等の取組を推進
(具体的施策)
・高速道路に直結する物流の中継拠点・ハブの整備
・高速道路と目的地をつなぐ公共交通等への乗り換えが可能なモビリティハブの整備
・スマートICや民間施設直結スマートIC等の整備
・道の駅等の高速道路外の休憩施設の活用の推進
・広域的な観光周遊を支援するサインや休憩施設等の充実 等
(3)未来の高速道路が目指すべき姿
1)高速道路を取り巻く国土・経済社会の未来 ※解決策のリスクとして活用できそうです。
今後の課題として
①気候変動等の進行による自然災害の更なる激甚化・頻発化
②更なる人口減少・高齢化
③日本の活力低下・世界の中での埋没
④インフラの老朽化の更なる加速等
が想定される。
更に、今後の経済・社会・環境の変化に伴い、現段階で想定することのできない新たな課題が出現することが予想される。また、高速道路が提供するサービスに大きな影響を与える技術革新について、内陸地震の予測技術、自動的に更新される電子地図、自己修復するコンクリート、ロボットとの身体共有技術や災害対応ロボットなどの実用化等が予測される。
2)未来の進化・改良の取組 ※リスク対策として活用できそうです。
・強靱性の向上、安全・安心の確保及び快適性の向上、並びに持続可能性の確保及び地域活性化の促進の観点において、更なる進化・改良を進めることが必要
・求められる機能を速やかに把握し、遅れることなく高速道路を適切に進化・改良していくことが重要
・社会・経済システムの進化と連携する中で、高速道路がこれらのシステムの中心となり、進化することにより、社会・経済の変革やパラダイムシフトをリードしていく
・進化・改良を継続することを可能とするため、必要な財源を安定的に確保するための措置について検討
※高速道路の将来像の話題が出題された場合、上記のような内容を論じることができれば高得点に結びつくでしょう。
簡単な例を少し
問題文テーマ → 高速道路の将来像
現状・背景 → 自然災害の激甚化・頻発化
問題点 → 被災により高速道路の機能が発揮できない
課題 → 災害時にも機能する強靱な高速道路に進化させる
解決策 → 災害時に「被災する道路」から「救援する強靱道路」への転換を推進
具体策 → 暫定2車線区間の4車線化
リスク → 気候変動等の進行による自然災害の更なる激甚化・頻発化
リスク対策 → 更なる進化・改良を進める。その後、求められる機能を速やかに把握し、遅れることなく高速道路を適切に進化・改良していく
のような論理展開が浮かびます。(リスク対策はもっと具体的なことを実際は記述しなくてはいけないかと思います)
3.高速道路を持続的に利用する枠組み
※リスク対策として使用できそうな部分もありますが、ざっと目を通す程度になりそうです。
(1)償還制度を前提とした有料道路制度の経緯
※省略
(2)現行の償還制度の限界
※省略
(3)高速道路の費用負担の基本的な考え方の確立 ※基本知識として理解しておきましょう
3つの理念に従い、現行の制度を見直す必要がある
① 維持管理・修繕 、更新、進化・改良を確実に実施する必要があり、その費用の負担も必然(MRG費用の負担)
② 必要となる費用については、基本的に、最大の受益者である利用者が負担する料金収入により財源を確保(利用者による負担)
③ 利用者負担を決定するにあたっては、料金が利用交通に与える影響も考慮し、国全体としての観点に加えて、地域政策的な観点からも検討する必要(地域の状況に応じた負担)
1)想定される負担
※省略
2)負担の基本的な考え方
※省略
(4)維持管理・更新・進化に関する枠組み
1)更新・進化への取組
①更新・進化の負担のあり方
②更新・進化に関する計画の策定と計画的・安定的な資金の確保
③現行の償還制度の見直し
2)将来の維持管理等の負担のあり方
※省略
(5)現在無料となっている高速道路における維持管理等の負担の方向性
1)経緯と現状
2)維持管理等の負担の方向性
(6)費用の負担に関するその他の課題 ※リスク対策として使える可能性があります。
1)自動運転のための投資に関する負担
2)電気自動車等による負担
3)一部の車両が利用する機能の強化のための投資に関する負担
4)負担における周辺地域と高速道路の関係
4.速やかに実現すべき料金制度のあり方
(1)全国料金
1)料金割引の基本的な考え方
①利用者の行動変化につながる料金割引の実現
②定期的かつ適切な評価の実施
2)現行の料金割引の評価と具体的な方向性 ※問題点、課題、解決策に活用できそうですが、曖昧な解決策にならないよう注意が必要です。
①平日朝夕割引
【現在の評価・問題点・課題】
・割引による渋滞緩和の効果が限定的なものとなっている区間が存在
・並行する一般道路が混雑していない区間も存在
・勤務形態の多様化により、現行の平日朝夕割引が適用される朝夕の時間帯以外にも通勤時間帯が拡大していく可能性
・中京圏等においては、割引が適用されている通勤時間帯に逆に高速道路が渋滞
【見直しの方向性・解決策】
・目的そのものの見直しも含めて、平日朝夕割引のあり方について検討(多様化する勤務形態に対応する必要があること、また、通勤時間帯に混雑している高速道路については、前後の時間帯への分散を図るなどの工夫)
②深夜割引
【現在の評価・問題点・課題】
・首都圏や近畿圏の本線料金所等において、深夜割引適用待ちの車両の滞留がみられる
・深夜割引がトラック運転者等の労働環境の悪化につながっている
【見直しの方向性・解決策】
・割引が適用される時間帯の走行分の料金を対象として割り引くような見直し
・割引適用時間帯の拡大について検討(割引率を段階的に拡大・縮小させるような工夫)
③休日割引
【現在の評価・問題点・課題】
・観光需要を喚起し、地域活性化を図るため導入したが、観光関連のトリップは半分程度に留まっている
・首都圏周辺では、繁忙期を中心に激しい渋滞が発生
【見直しの方向性・解決策】
・繁忙期等に休日割引を適用しない
・観光関係事業者等と連携し、観光トリップを対象とする割引となるよう検討
④大口・多頻度割引
【現在の評価・問題点・課題】
・深夜割引との重複適用により、割引が適用されない普通車の料金を下回ることもあり、構造物に与える影響等に応じた公平な負担の観点からは、割引率が高すぎるとの指摘
・利用者団体からは、感染症の影響から経済が回復するまでの間、割引率を拡充すべきとの意見
・契約単位割引については、感染症の影響により、1台あたりの月間利用額が低下した結果、割引が適用されないケースが散見されるなど、利用者にとって不安定な割引
【見直しの方向性・解決策】
・割引率については、現下の経済状況を踏まえた拡充と、原因者負担の公平性の観点からの縮小の両面について、引き続き検討
・外的要因に大きな影響を受けやすい契約単位割引と、相対的に小さい影響しか受けない車両単位割引のバランスの見直しについても検討
⑤マイレージ割引
【現在の評価・問題点・課題】
・利用者が割引を実感しにくいとの指摘
【見直しの方向性・解決策】
・他の民間企業のポイント制度等も参考に、利用者が割引を受けていることを実感できる制度への見直しについて検討
(2)大都市圏料金
1)これまでの大都市圏料金の評価 ※現状・背景として活用できそうです。
料金の賢い3原則
①利用度合いに応じた公平な料金体系
②管理主体を超えたシンプルでシームレスな料金体系
③交通流動の最適化のための戦略的な料金体系
・公平な料金体系に関しては、並行する一般道路の渋滞区間の交通量減少にもつながるなど概ね利用者に受け入れられている
・シンプルでシームレスな料金体系に関しては、交通流動をコントロールする効果が一定程度発揮されている
・今後も、道路ネットワーク整備の状況や社会情勢の変化を踏まえつつ、継続的に評価を行うことが必要
2)料金の賢い3原則に沿った料金体系の進化 ※課題・解決策として活用できそうです。
①料金体系の整理・統一(公平な料金体系)
引き続き、料金体系の整理・統一を進め、路線によらず、利用距離に料金が比例する対距離料金の導入を推進
・大都市圏の高速道路の慢性的な渋滞の解消等に向けて、上限料金については、順次見直し、完全な対距離料金への移行を進める
・阪神高速等についても、道路ネットワークをより賢く使うための見直しを検討
・現在の料金体系に移行する際に、様々な路線に導入されている激変緩和措置については、地域の意見等に配慮しつつ、激変緩和という役割を踏まえて継続的にその見直しを検討
②管理主体の継ぎ目のない料金の実現(シンプルでシームレスな料金体系)
・今後も道路ネットワークの整備に合わせて、当面は、経路によらず、起終点間の最短距離を基本に料金を決定
・本線料金所の撤去のためにETC専用化等の概成に向けて着実に取組を進める
・ターミナルチャージのあり方(重複徴収を撤廃)について検討
③混雑状況に応じた料金の導入(戦略的な料金体系)
・交通需要の偏在等による混雑の緩和を図るため、特定の時間帯や経路の料金の割引や割増を行う料金を本格的に導入
・利用者の料金に対する認知度を向上させることが重要であり、分かりやすい料金設定や広報が必要
・一定時間ごとに変動する機動的な料金の導入(柔軟に料金設定を変更することができる料金システムへの改良)
(3)車種区分のあり方
・車種区分の基本的な考え方である、占有者負担、原因者負担、受益者負担の3つの考え方を踏まえ、今後の車種区分のあり方について検討
・各負担に関する最新の知見を踏まえた上で、二輪車と軽自動車のみではなく、普通車から大型車・特大車までの車種間の不公平感が生じないような区分とすることが重要
(4)ビッグデータを活用した評価の高度化
・交通量データや、ETCログデータに加えて、近年、収集・蓄積が加速化されつつあるETC2.0プローブデータ等の経路データを加えた分析について、積極的に取り組むべき
・一般道路と高速道路が近接して並行している区間においては、既存のETC2.0プローブデータのみではどちらを通行したのかを判定することは困難であるため、他のデータと組み合わせて使用するか、もしくはETC2.0プローブデータの仕様を見直す必要あり
5.その他
[高速道路会社・高速道路機構・国の役割分担のあり方]
①激甚化・頻発化する自然災害への対応や、高度経済成長期に大量に建設されたストックの劣化等への対策の必要性などを踏まえると、高速道路の果たす公的使命と責任は非常に大きい
②民間会社としての高速道路会社の経営の自由度を確保し、その活力を最大化させるという意識も重要
この両方の観点から、各高速道路会社・高速道路機構・国の役割分担のあり方について、組織・体制等も含めて、必要に応じて検討を進める
[インセンティブ助成制度の活用]
・インセンティブ助成制度を活用して、修繕分野や更新事業、カーボンニュートラルに関する取組を推進
[料金等を変動させる仕組み]
・資材・労務単価の変動や税制の改正等は、債務の返済計画に直接的に影響するため、これらの変動・改正等に合わせて、料金等を調整する仕組みについても議論が必要
<論文での活用>
上記をうまく活用できると高評価論文が記述できるかと思います。
特に選択問題Ⅲとして活用できそうです。
出題されるテーマによって使い分けができるよう訓練しておきましょう。
少しでも参考になったのであれば幸いです。
以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。