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【令和5年度 技術士第二次試験問題 建設部門 道路科目 Ⅲ-1】について考える。【模範解答イメージあり】

〇問題文

我が国では、交通事故のない社会を目指し、様々な取組が進められているが、近年においては、時代のニーズに応える交通安全の取組が一層求められている。このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。

(1)道路における交通安全に係る現状等を踏まえ、交通安全の取組について、道路に携わる技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

 

 

〇問題文把握

まずはしっかり問題文を読み込み、背景・現況などを把握しましょう。

背景:我が国では、交通事故のない社会を目指している

現況:時代のニーズに応える交通安全の取組が一層求められている

立場:道路技術者(細かい設定なし)

という情報が問題文から読み取れます。

「交通安全」に関する最近の話題であれば特に問題なさそうです。

 

(1)の問題文では、

「3つの課題を抽出」となっていますので、例年同様、課題を3つ挙げる必要があります。

また、「それぞれの観点を明記したうえで」となっていますので、例年同様、それぞれの観点をはっきり記述する必要もあります。

 

(1)の課題を考えるとき、思いつく解決策を先に列挙しておくと展開が楽になるのが通例です。

ただ、この問題は令和3年3月に公表された「第11次交通安全基本計画」を参考にすると論理展開しやすいと思います。

実際の試験本番では、一般的な交通安全話題で構成を考えた受験生が多かったのではと感じています。

自転車や無電柱化、ゾーン30プラス、災害、高速道路などの知識をうまく活用できれば記述できた問題だったと思います。

 

「第11次交通安全基本計画」の概要版抜粋で今回は考えてみます。(第1章 道路交通の安全のみ該当)

 

【対策の視点】※これが「観点」として参考になりそうです。

①高齢者及び子供の安全確保

②歩行者及び自転車の安全確保と遵法意識の向上

③生活道路における安全確保

④先端技術の活用推進

⑤交通実態等を踏まえたきめ細かな対策の推進

⑥地域が一体となった交通安全対策の推進

 

【対策の柱】※これが「課題」として参考になりそうです。

①道路交通環境の整備

②交通安全思想の普及徹底

③安全運転の確保

④車両の安全性の確保

⑤道路交通秩序の維持

⑥救助・救急活動の充実

⑦被害者支援の充実と推進

⑧研究開発及び調査研究の充実

 

また、【具体的対策】がそれぞれの解決策候補となりそうです

課題①道路交通環境の整備の解決策候補

・生活道路等における人優先の安全・安心な歩行空間の整備

・高速道路の更なる活用促進による生活道路との機能分化

・幹線道路における交通安全対策の推進

・高齢者等の移動手段の確保・充実

・自転車利用環境の総合的整備

・ITS(高度道路交通システム)の活用

・災害に備えた道路交通環境の整備

・交通安全に寄与する道路交通環境の整備

 

課題②交通安全思想の普及徹底の解決策候補

・段階的かつ体系的な交通安全教育の推進

・交通安全に関する普及啓発活動の推進

・交通の安全に関する民間団体等の主体的活動の推進

 

課題③安全運転の確保の解決策候補

・運転者教育等の充実

事業用自動車の安全プラン等に基づく安全対策の推進

 

課題④車両の安全性の確保の解決策候補

・車両の安全性に関する基準等の改善の推進

・自動運転車の安全対策・活用の推進

・自動車アセスメント情報の提供等

・自転車の安全性の確保

 

課題⑤道路交通秩序の維持の解決策候補

・交通指導取締りの強化等

・交通事故事件等に係る適正かつ緻密な捜査の一層の推進

 

課題⑥救助・救急活動の充実の解決策候補

・救助・救急体制の整備

・救急医療体制の整備

 

課題⑦被害者支援の充実と推進の解決策候補

・自動車損害賠償保障制度の充実等

・損害賠償の請求についての援助等

・交通事故被害者等支援の充実強化

 

課題⑧研究開発及び調査研究の充実の解決策候補

・安全な自動運転を実用化するための制度の在り方に関する調査研究

・道路交通事故原因の総合的な調査研究の充実強化

 

上記をうまく整理して論文構成を練ることができれば合格論文が記述できそうです。

観点の表現が非常に悩みますが、とりあえず課題をまとめてみると

 

①(環境の観点)「道路交通環境の整備」が課題     

②(安全意識の観点)「交通安全思想の普及徹底」が課題  

③(運転能力・資質の観点)「安全運転の確保」が課題

④(車両技術の観点)「車両の安全性の確保」が課題

⑤(交通ルールの観点)「道路交通秩序の維持」が課題

⑥(負傷者の観点)「救助・救急活動の充実」が課題

⑦(被害者の観点)「被害者支援の充実と推進」が課題

⑧(データ分析の観点)「研究開発及び調査研究の充実」が課題

という整理になるかと思います。(イマイチな観点もありますが、記述内容に応じて【対策の視点】を参考に考えましょう・・・)

 

(1)の問題文は「多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ」なので、

①環境の観点から、道路交通環境の整備が課題 

②安全意識の観点から、交通安全思想の普及徹底が課題

③運転能力・資質の観点から、安全運転の確保が課題

④・・・・・

 

と8つのうち3つを記述できればOKかと思います。

 

(2)の問題文は「前問(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ」となっていますが、最も重要としなければならないものは特にない気がします。ただ、資料を読むと「①道路交通環境の整備」に関することが多く記載されていますので、これを選択するのが標準となりそうです。それなりに理由が述べられれば、どれを選択しても問題ないでしょう。実際は解決策として記述しやすいもの、リスク対策が記述しやすいものを選択することになりますが・・・

 

(3)の問題文は「すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ」となっています。

資料には特に記載されていないので、一般論で考えましょう。

 

すべての解決策から新たに生じうるリスクを考えてみます。

「新たに」「専門技術」を意識した内容が理想となります。

新たに生じうるリスク候補は「費用(コスト)関連」「人材不足関連」「ノウハウ関連」などが考えられますが、解決策に合わせて考えなくてはいけません。

また、専門技術を踏まえた話題にする必要がありますので、道路専門技術に関するキーワードも含めることになりそうです。

本来はリスクも対策も専門技術に関する話題が理想ですが、うまく思いつかない場合は対策だけでも専門技術に関する話題を取り入れましょう。

 

リスクが「費用(コスト)関連」 → 対策は「国支援」「民間資金活用」「選択と集中で対象を絞る」など

リスクが「人材不足関連」 → 対策は「ナレッジマネジメント活用」「生産性向上」「民間コンサル支援」など

リスクが「ノウハウ関連」 → 対策は「国支援」「民間コンサル支援」「社会実験」「試行運用」など

リスクが「時間関連」 → 対策は「積極的な国主導によるスピードアップ」など

など色々なパターンを準備しておきましょう。

 

以上が問題文を把握し、記述するまでの頭の中の状態です。

 

 

〇記述例

実際の記述例を簡単に記載します。

合格論文ではなく論文イメージであり、たくさんある例の1つです。詳細はご自身で調べ考え、第三者に見てもらうことで上達します。あくまでも参考例(資料抜粋例、文字数無視)であり、これを暗記して対応しようとしても合格はできません

 

1.課題

(1)道路交通環境整備の推進(環境の観点)

 これまで幹線道路と生活道路の両面で道路交通対策を推進してきたことにより、一定の事故抑止効果が確認された。しかし、我が国の歩行中・自転車乗用中の死者数の割合は諸外国と比べて高いことから、歩行者や自転車が多く通行する生活道路における安全対策をより一層推進する必要がある。また、少子高齢化が一層進展する中、子供を事故から守り、高齢者や障害者が安全・安心して外出できる道路交通社会の形成を図る必要がある。さらに、道路交通の円滑化を図ることによって交通安全を推進する必要がある。

 したがって、環境の観点から道路交通環境の整備を推進することが課題である。

(2)交通安全思想の普及徹底(安全意識の観点)

 交通安全教育は、自他の生命尊重という理念の下、交通社会の一員としての責任を自覚し、交通安全のルールを守る意識と交通マナーの向上に努め、相手の立場を尊重し、他の人々や地域の安全にも貢献できる良き社会人を育成する上で、重要な意義を有している。そのため、交通安全意識を向上させ交通マナーを身に付けるためには、人間の成長過程に合わせ、生涯にわたる学習を促進して国民一人一人が交通安全の確保を自らの問題として捉えるよう意識の改革を促すことが重要である。また、人優先の交通安全思想の下、子供、高齢者、障害者等に関する知識や思いやりの心を育むとともに、交通事故被害者等の痛みを思いやり、交通事故の被害者にも加害者にもならない意識を育てることが重要である。

 したがって、意識の観点から交通安全思想の普及を徹底することが課題である。

(3)車両の安全性の確保(車両技術の観点)

 近年、自動車に関する技術の進歩は目覚ましく、様々な先進安全技術の開発・実用化が急速に進んでいる。交通事故のほとんどが運転者の交通ルール違反や運転操作ミスに起因している状況において、こうした技術の活用・普及促進により、交通事故の飛躍的な減少が期待できると考えられる。すでに衝突被害軽減ブレーキの普及等に伴い、事故件数及び死傷者数は減少傾向にあるものの、交通事故は依然として高水準にある。相次いで発生している高齢運転者による事故や子供の安全確保も喫緊の問題であることから、自家用自動車及び事業用自動車双方における先進安全技術の更なる性能向上及び活用・普及促進により着実に交通安全を確保していくことが肝要である。

 したがって、車両技術の観点から車両の安全性を確保することが課題である。

 

2.解決策

 上記課題のうち最も重要と考える課題は「(1)道路交通環境整備の推進」である。なぜなら・・・(理由を記述)。以下にその解決策を示す。

(1)生活道路等における人優先の安全・安心な歩行空間の整備

 道路交通環境整備の推進に対する解決策の1つとして挙げられることは、生活道路等における人優先の安全・安心な歩行空間を整備することである。なぜなら、これまで一定の成果を上げてきた交通安全対策は、主として「車中心」の対策であり、歩行者の視点からの道路整備や交通安全対策は依然として十分とはいえず、また、生活道路への通過交通の流入等の問題も依然として深刻だからである。

 具体的には、最高速度30キロメートル毎時の区域規制等を実施する「ゾーン30」の整備を推進するとともに、通行禁止等の交通規制を実施するほか、高輝度標識等の見やすく分かりやすい道路標識・道路標示の整備や信号灯器のLED化、路側帯の設置・拡幅、物理的デバイスと組み合わせたゾーン規制の活用等の安全対策や、外周幹線道路を中心として、信号機の改良,光ビーコン・交通情報板等によるリアルタイムの交通情報提供等の交通円滑化対策を実施する。また、・・・

(2)高速道路の更なる活用促進による生活道路との機能分化

 道路交通環境整備の推進に対する解決策の1つとして挙げられることは、高速道路の更なる活用促進による生活道路との機能を分化することである。なぜなら、・・・(理由を述べる)。

 具体的には、高規格幹線道路等、事故率の低い道路利用を促進するとともに、生活道路においては、車両速度の抑制や通過交通を排除し、人優先の道路交通を形成・・・

(3)幹線道路における交通安全対策の推進

 道路交通環境整備の推進に対する解決策の1つとして挙げられることは、幹線道路における交通安全対策を推進することである。なぜなら、・・・(理由を述べる)。

 具体的には、事故ゼロプラン(事故危険区間重点解消作戦)の推進・・・

 

3.リスクと対応策

 上記解決策を実施し、道路交通環境整備を推進しても、地域住民に確実に周知できていなければ、理解・活用してもらえないリスクがある。

 上記リスクの対策として挙げられることは、広報活動の強化である。また、地域が一体となった交通安全対策の推進、地域の実情を踏まえた施策の推進・・・(複数案、具体例を述べる)。

 

以上

 

〇まとめ

 ざっとまとめてみましたが、これが「正解」というわけではありません。他にもっとよい正解があるかと思います。実際に合格点をもらった論文を研究することも必要です。色々な情報を集め、多くの意見に耳を傾けることによって、更なるレベルアップに努めてください。

 

※最後まで読んでいただきありがとうございます。