〇問題文
高速道路ネットワークの進展に伴い、社会経済活動における高速道路の役割の重要性は増しており、持続的な経済成長や国際競争力の強化を図るため、高速道路をより効率的、効果的に活用していくことが重要である。しかし、我が国では、限られた財源の中でネットワークを繋げることを第一に高速道路の整備を進めてきた結果、開通延長の約4割が暫定2車線区間となっており、諸外国にも例を見ない状況にある。
このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。
(1)暫定2車線について、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
〇問題文把握
まずはしっかり問題文を読み込み、背景・現況などを把握しましょう。
背景:我が国は高速道路ネットワークを繋げることを第一に高速道路の整備を進めてきた
現況:開通延長の約4割が暫定2車線区間となっており、諸外国にも例を見ない状況
立場:技術者(細かい設定なし)
という情報が問題文から読み取れます。
平成29年度問題と大きく変わった点もなく、特に注意が必要な問題文ではないかと思います。
(1)の問題文では、
「多面的な観点から3つの課題を抽出」となっていますので、課題は3つと個数が指定されています。
また、「それぞれの観点を明記したうえで」となっていますので、それぞれの観点をはっきり記述する必要もあります。
(1)の課題を考えるとき、思いつく解決策を先に列挙しておくと展開が楽になります。
この問題は国土幹線道路部会の資料を参考にするとよいでしょう。
ただ、第37回国土幹線道路部会の資料には以下の課題3つが記載されています。
①時間信頼性の確保の観点 (→ 渋滞緩和)
②事故防止の観点 (→ 安全性確保)
③ネットワークの代替性確保の観点 (→ ネットワーク機能強化)
なので、この3つの課題の観点を挙げることで高得点につながるかと思います。
(2)の問題文は「抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ」になっています。
今回の場合は、解決策を列挙して、それに合う課題を重要課題と選択するほうが無難となりそうです。
【解決策候補】となりそうなのは
①4車線化 → 課題①②③に対応
②中央にワイヤーロープやガードレールなどを設置 → 課題②に対応
③付加車線の設置・追加 →課題①②に対応
程度しか解決策が思い浮かばないですね・・・
橋梁耐震補強や法面対策、新ルート道路整備などでもOKだとは思いますが・・・
複数の解決策が必要ですが、他に何があるのでしょうか・・・
この解決策候補ですと最も重要としなければならないものは「②事故防止の観点」になりそうです。というより、これ以外の論理展開が私には浮かばないですね・・・
色々な方の意見を聞きたいところです。
(3)の問題文は「すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ」となっています。
「すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスク」という表現は昨年と微妙に違いますが、基本は同じと考えて問題なさそうです。
ただ、「共通」という表現ではなくなったので、少し選択肢が広がった印象があります。
すべての解決策から新たに生じうるリスクを考えてみます。
新たに生じうるリスク候補は「費用(コスト)関連」「人材不足関連」「ノウハウ関連」などが考えられますが、解決策に合わせて考えなくてはいけません。
また、専門技術を踏まえた話題にする必要がありますので、道路専門技術に関するキーワードも含めることになりそうです。
本来はリスクも対策も専門技術に関する話題が理想ですが、うまく思いつかない場合は対策だけでも専門技術に関する話題を取り入れたいところです。
一般的なリスク展開は、
リスクが「費用(コスト)関連」 → 対策は「国支援」「民間資金活用」「選択と集中で対象を絞る」など
リスクが「人材不足関連」 → 対策は「ナレッジマネジメント活用」「生産性向上」「民間コンサル支援」など
リスクが「ノウハウ関連」 → 対策は「国支援」「民間コンサル支援」「社会実験」「試行運用」など
リスクが「時間関連」 → 対策は「積極的な国主導」など
など色々なパターンを準備しておきましょう。
(以下に示す記述例は別パターンで攻めてみます。)
この部分はあらかじめ知識の引き出しを増やしておき、試験本番、臨機応変に対応すべきところだと思います。
以上が問題文を把握し、記述するまでの頭の中の状態です。
〇記述例
実際の記述例を簡単に記載します。
(合格論文ではなく論文イメージであり、たくさんある例の1つです。詳細はご自身で調べ考え、第三者に見てもらうことで上達します。あくまでも参考資料であり、これを暗記して対応しようとしても合格はできません)
1.課題
(1)渋滞緩和
我が国では高速道路ネットワークを繋げることを第一に高速道路の整備を進めてきた結果、開通延長の約4割が暫定2車線方式を活用した区間となっている。しかし、この方式は交通量が増加している地域では交通容量不足による慢性的な渋滞を引き起こしており、時間信頼性を確保できない状況である。
したがって、時間信頼性確保の観点から、高速道路をより効率的、効果的に活用していくため、渋滞を緩和することが課題である。
(2)安全性確保
我が国では高速道路ネットワークを繋げることを第一に高速道路の整備を進めてきた結果、開通延長の約4割が暫定2車線方式を活用した区間となっている。しかし、この方式はラバーポールなど簡易構造物で区分された対面通行であるため、事故が発生すると対向車線に飛び出してしまう可能性が高い。死亡事故の約7割が飛び出し事故に関連するものであり、重大事故を防止できない状況である。
したがって、事故防止の観点から、高速道路をより効率的、効果的に活用していくため、安全性を確保することが課題である。
(3)ネットワーク機能強化
我が国では高速道路ネットワークを繋げることを第一に高速道路の整備を進めてきた結果、開通延長の約4割が暫定2車線方式を活用した区間となっている。しかし、この方式は災害などで1車線でも被災すると、片側通行や通行止め規制となり、高速道路ネットワークの機能が発揮できない。また、並行現道が被災により通行止めになった場合、多くの車両が高速道路に一斉に流れ込むため渋滞が発生し、代替路としての機能を十分発揮できない状況である。
したがって、ネットワークの代替性確保の観点から、高速道路をより効率的、効果的に活用していくため、ネットワークの機能を強化することが課題である。
2.解決策
上記課題のうち最も重要と考える課題は「(2)安全性確保」である。なぜなら・・・(理由を記述)。以下にその解決策を示す。
(1)4車線化
高速道路の安全性を確保するための解決策の1つとして挙げられることは、高速道路の4車線化である。なぜなら、4車線化により中央分離帯に防護柵が設置されるため、対向車線に飛び出すような重大事故を減少させることができるからである。
具体的には、・・・(具体的説明)
(2)飛び出しにくい構造物構造
高速道路の安全性を確保するための解決策の1つとして挙げられることは、対向車線に飛び出しにくい構造物で区分する道路構造にすることである。なぜなら、〇〇〇〇(理由)。
具体的には、ワイヤーロープやガードレールなどの構造で区分すると、対向車線への飛び出しを防ぐとともに衝突時の衝撃も緩和することができる。また、・・・(具体的説明)
(3)付加車線の設置・追加
高速道路の安全性を確保するための解決策の1つとして挙げられることは、付加車線の設置・追加である。なぜなら、〇〇〇〇(理由)。
具体的には、・・・(具体的説明)
※詳細は省略します。ご自身で調べた内容を記述してください。
3.リスクと対策
上記解決策をすべて実施し、安全性を確保したくても、全国すべての高速道路に実施するだけの費用を確保することが困難であることがリスクである。
上記リスクの対策として挙げられることは、選択と集中で対象を絞ることである。事故件数や事故率などを指標化し、評価することで優先整備区間を選定し、限られた予算で危険度の高い高速道路から順次整備していく。
※実際は専門技術を踏まえ、もう少し深く(詳しく)説明する必要があります。
以上
〇まとめ
ざっとまとめてみましたが、これが「正解」というわけではありません。他にもっとよい正解があるかと思います。色々な情報を集め、多くの意見に耳を傾けることによって、更なるレベルアップに努めてください。
※最後まで読んでいただきありがとうございます。